タイムの一歩
私が学校に行くのは、彼に会うためだと言っても過言ではない。
同じクラスの善法寺伊作くん。綺麗な茶髪で、優しそうな目をしていて、生物が得意で、保健委員長をやっていて、友達がたくさんいて、ちょっと不運なところもあるけど。
それから、えっと…とにかくかっこいいのだ。私みたいな地味な子が近づけないくらい、きらきらとした王子様みたいなオーラを発している。
そう、彼はまさしく白馬が似合う王子様なんだ。
でも…私なんて、いくら頑張ったとしてもお姫様にはなれそうにない。
「おはよう、留三郎」
「おはよ、伊作。今日は転んだりしてないのか?」
「僕だって毎日転ぶわけじゃないよっ」
ほら、また今日も一番仲がいい食満くんと挨拶を交わしている。
食満くんは制服をいつも着崩しているけど、善法寺くんは違う。保健委員長としての立場もあるからかもしれないけど、シャツのボタンはいつもきちっと留めている。でも真面目すぎる印象は受けないのは、たぶん彼の人柄なのかな。
自分の席に着こうと善法寺くんがこっちに近づいてくる。
別に私に近づいてくるわけじゃない。そんなこと絶対ないのに…どうやら、今日の私はいつもより幾分か積極的らしい。
横を通り過ぎようとした善法寺くんに、声が上擦りながらも思わず声をかけていた。
「…お、おはようっ善法寺くん」
「おはよう、悠歌ちゃん」
善法寺くんがこっちを見て、笑顔で挨拶してくれた。
その綺麗な声が、わ、私の名前を呼んでくれた…だと!?
タイムの一歩
(少し期待してしまうじゃないか!!)
花言葉…勇気、行動力
[ 20/30 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]