唯一のつながりが消える話

いつも固く結ばれた仙蔵の右手と私の左手。
最初は心地よいとすら感じていたこの行為も、時と歳を重ねるごとにすごく窮屈な行為にしか思えなくなってきた。


「ねぇ…なんでいつも手を繋ぐの?」

「私がお前を愛しているからだ。…何だ不満か?そんなことないだろう」

「…少し、恥ずかしいんだけど」

「その恥ずかしさと私を好きな気持ち、どちらを優先する?」

「…仙蔵だよ」

「だったらいい。それに、なにも恥じることのない行為なのだから」


そう言って彼はよりいっそう手に入れる力を強める。このやりとりを私たちは何回しただろうか。
返ってくる言葉はいつも同じ。愛しているという言葉も、平均より低い温度の彼の手も、私を縛って離さない鎖に感じたのが始まりなのかもしれない。



「ねぇ仙蔵!」

「何だ悠歌?」

「何だじゃないでしょ!?仙蔵だよね、私の携帯の履歴勝手に見て、電話帳全部消したの!!」

「………」

「それに男友達にいたっては私のふりして勝手にメール送ったでしょ!?『もうメールしてこないで』って。私がやったんじゃないって弁解するの大変だったんだからっ」

「………」

「ねぇ聞いてる!?私本気で怒って「それが、どうした?」…え??」


ずっと黙って私の言葉を聞いていた仙蔵。
その彼が口を開いたと思えば、聞こえてきたのは耳を疑うような言葉だった。


「何それ!?私が本気で困ってるっていうのにっ」

「私がしたその行為について、特に言うこともないし後悔もしていない。と、言えば分かるか?」

「っ!?」

「なぜ悠歌は分かってくれない?…あぁ、そうか。お前が私の言葉を理解するまで、鎖ででもつなぎ止めておいてやろう」


そうしたらずっと一緒にいれるだろう?
そう言う仙蔵の顔はあまりにも綺麗すぎて。直視できず思わず目を背けた。
無理だ、私には彼の愛は受けとめられない…怖い、恐い。


「せ、仙蔵…あなた、変わったよ」

「変わってなどいない。私はいつもお前を一番に考えて、お前のためを思って行動しているさ」

「変わったわよ。その行動が、日に日におかしくなってることに気づきなさいよっ」


そんな仙蔵とは、さよならだ。
そう告げるように、私は仙蔵の手をおもいっきり振りほどいた。赤い糸が切れたぷちんという音がしたように思えたのは、ただの気のせいだろうか。



唯一のつながりが消える話
(修復されることは、もうない)


title by 確かに恋だった

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