キャラメリゼ

「なぁ…今日、何の日か知ってるか?」

「ん??」


部屋で二人まったりした時間を過ごしていると、何の脈絡もなく三郎が私に聞いてきた。
びっくりして三郎の顔を見つめると、いつもの飄々とした表情ではなく真剣に何かを求めているような、そんな顔だった。

何を求めているかは見当がついていたが…そうだ、たまにはやり返したっていいじゃないか。


「二月十四日…ふんどしの日だね」

「…そうなのか??」

「そうらしいよ。語呂合わせだって、今朝テレビでやってたもん」

「へぇ」

「それににぼしの日でしょあとは…」


じれったそうな顔の三郎が面白くてつい調子にのって喋りすぎていると、彼は私を引き寄せて抱きしめる。
ちょっと苦しいし、ここはソファの上だから体を自由に動かせない。


「お前、私が欲しい答え分かっていてはぐらかしているだろう?」

「…だったら?」

「言ってくれ。悠歌の口から聞きたい」

「…バレンタインデー」

「よくできました」

「何?そんなにチョコレート欲しいの?」

「あぁ。私も男だからな」

「…ばーか」


そう強がってポケットに隠していた小さな包みを三郎に渡す。
恥ずかしくって学校では渡せなかったけど、何だったら喜んでもらえるだろうかとかずっと考えて作ったチョコだ。

三郎はいったん私を離し、包みのリボンをしゅるしゅるほどいていく。その器用な指先にちょっとだけきゅんとした。
取り出したのはカップに入ったチョコレート。ちょこっとキャラメルを混ぜた自慢のチョコレートだ。


「悠歌にしては頑張ったな」

「私にしてはは余計っ」

「ははっ…すごく美味しそうだ」


つまんだチョコを口に含んで、そして三郎は何を考えたのかすぐに私の口にもそのチョコを入れた…キスという形で。それは少しの苦みも残して消えていった。


「…どうだ?自分で作ったチョコの味は?」

「ばっかやろー!!」


結構苦いはずのチョコも、三郎のせいですっごく甘く感じたなんて、絶対言ってやるもんか。



キャラメリゼ
(甘く溶けた、そんな一日)



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