綿毛な彼女
三之助が迷子になるのは、幼い頃仲がよかった女の子を探しているからだ。
「…ねぇ、一緒に遊ぼう?」
幼なじみでいつも一緒にいた私たちの間に入り込んできた彼女。
肌は青白くて、笑顔も儚い印象があって、一目で身体がそんなに強くないことを悟った。
それでも彼女を仲間外れにすることはなく、三人で傍から見れば仲良く遊んでいた。
次第に、三之助は彼女に執着するようになった。二人で町に出かけたり、具合が悪いときにはお見舞いにも行った。そして必然的に、私と二人の時間は短くなっていく。
「私の命はもう、長くないの」
「…うん」
「だから私がいなくなっても悠歌ちゃん、三之助くんをお願いね」
「………うん」
彼女が私だけに告げた言葉。
その時私の心の中に芽生えたのは同情心でもなんでもなくて、ただの彼女に対する憎悪の気持ちだった。殺意、に近かったかもしれない。
私の方がずっと三之助と一緒にいるのに!!私の方が三之助のこといっぱい知ってるのに!!何でお前はそんなに上から私のことを見るの!?
思ってはいても私は口に出さないで頷いてばかり。あぁ、なんて醜いんだろう。私。
「ねぇ。もう、あの子はいないんだよ」
「そんなことはないさ。きっとどこかにいるから、そしてまた三人で遊ぶんだ」
今日も、三之助は彼女を探している。
町の中、森の中、荒野。放っておいたらどこまでも行ってしまいそう。
ねぇ、一緒に彼女のお葬式にも行ったよね?三之助、泣いてたよね?
背も伸びて、だんだんと大人に近づいていく私たち。だけど、いつまで経っても三之助は、私を見ない。
綿毛な彼女(ふわふわ舞って、また消えた)
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