02

※竹谷視点



「お久しぶりです、兄さん。…今日からよろしくお願いします」


前に会ったのは一年以上も前、想像してたよりもずいぶんと大人びたいとこがドアの前に立っていた。

今年からいとこの夕璃は俺と同じ大川学園に通うらしい。
最初は実家から通う予定だったそうだが、電車時間などの都合により俺と同居することにしたそうだ。

ここと彼女の元実家は車でも三時間くらいかかるから、夏休みや冬休みにしか会えていなかったし、俺が高校に入ってからはめっきり会う機会が減っていた。

その会えない期間に真面目そうな顔は相変わらずだったが、髪は伸びて目もぱっちりとした美人になっていた。これでノーメイクとは、我がいとこながら恐ろしい。

こんな美人と俺が同棲…じゃなかった、同居するなんて。いとこなのになぁ…なんでだろ、少しドキドキする。


***


「起きろよ夕璃!朝だぞーっ!」


同居生活して一週間、こいつは朝が弱いことが分かった。
いわゆる低血圧ってやつで一人では起きてこないので、俺が彼女の部屋に起こしに行くのが日常になってしまった。


「…すぅ、すぅ……」


部屋に入ると案の定まだ夢の中で、幸せな夢でも見ているのか安らかな寝息をたてている。
いつもはぱっちりとしている瞳も今は長いまつげで縁取られてて…くそ、可愛いな。


「お、おい夕璃、目覚まし鳴ってたぞ。起きろよ!遅刻するぞ!」

「…ぁと、五分」

「そんなお決まりの台詞言ってもダメだ!起きろ!」

「……むぅ」


俺が無理矢理彼女がくるまっている布団をひっぺがすと、肌寒いのか少し身じろぎしたあと体を起こした。

起こしたはいいがまだ目は焦点が定まってなく、ぼけっとしている感じだ。


「…はよ、兄さん」

「おはよ。早く飯作ろうぜ」

「はぁい……ふぁ」


あくびをしながらも俺の後をついてくる夕璃。
パジャマ姿だし、髪はまだセットしてないから少し後ろがはねていて、少しだらしない印象を与える。

何より、眼鏡をかけていない夕璃を見れるのは、俺だけの特権だ。



お世話になってます。
(いつまで心臓が保つのやら)

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