25@B

「…というわけで学級委員長委員会として応援に来ました。中等部一年は組学級委員長、黒木庄左ヱ門です」

「同じく高等部一年い組学級委員長、永嶋夕璃です。よろしくお願いします」

「よろしくな。俺は用具委員会委員長、高等部三年は組の食満留三郎だ」

「中等部三年ろ組の富松作兵衛です」

「ち、中等部一年ろ組の下坂部平太です…」

「中等部一年は組、福富しんべヱでーす」

「同じく、山村喜三太でーす」

「「二人合わせて、ポカポカコンビでーっす」」

「ぽ、ぽかぽか…??」


結局じゃんけんで勝ったのは張り切っていた三郎先輩でも勘先輩でもなく、一番冷静だった庄左ヱ門君だった。
負けた時の先輩たちのあの表情といったら…とても私の口からは表現できないです。


しんべヱ君と喜三太君は前にも会ったことがある。
あとで作兵衛君から聞いて知ったことだけど、あの二人の『ポカポカコンビ』というのは仙蔵先輩が銘々したらしい。…何となく分かるきがする。ぽかぽかって。

一年ろ組の平太君と会うのは初めてだ。
ちょっとうつむき気味で作兵衛君の後ろに隠れていたけど、私が手を差し出すと躊躇いながらもぎゅっと握ってくれた。私よりも少し小さくてあったかい手だ。



一通り挨拶が終わると、「よしっ」と食満先輩の号令がかかった。


「それじゃあ用具の運び出しを行う。重いのもあるから、そういうときは無理せず二人か三人で運べ。いいな?」

『はいっ』

「よし、始めるぞ。気をつけろよ」


七人で用具倉庫に入る。そしてちょっと埃をかぶっている用具を外に運び出す。
サッカーボール、野球のグローブ、テニスのラケット…たまに何に使うのかが分からないようなものもあった。大川学園は部活動が豊富だからなぁ…。


「夕璃先輩、重くないですか?」

「大丈夫だよ」

「そ、そうですか。もし重かったら言ってください。俺が手伝いますんでっ」

「うん。ありがとう、作兵衛君」


疲れているけれど作兵衛君には精一杯の笑顔を向ける。
一人で頑張るんじゃなくて、大変な時は頼ってもいいんだなって想わせてくれた。やっぱり、委員会活動っていいな。

よし、もう一頑張りだっ。



***



「(ふぅ、野球用具の移動はこれで全部かな)」


日差しも少しずつ強くなってきて、首に汗が伝う。私はそれをタオルで拭き取り倉庫へと戻ろうとした。
もうすぐこの作業も終わる。あと少し、あと少しと自分に言い聞かせながら倉庫へ足を進めると、その足首を何かが這うような感触。
こ、これはもしかして…またなのか!?


「き、喜三太君っ!!!」

「うわぁ、富松せんぱーいっ」

「どうした、喜三太?」

「ボクのなめくじさんたちが、夕璃先輩に向かって行きましたー」

「な、なんだってー!?」

「た、助けて…庄左ヱ門君、作兵衛君……」

「こら喜三太、先輩を困らせちゃ駄目じゃないか」

「ごめん庄左ヱ門…」

「謝るなら夕璃先輩に謝らなきゃ」

「喋ってないで助けてよぅ…」

「お、俺がなんとかしますから…ちょっと待っててください。おい平太、食満先輩を呼んでこい!」

「は、はぁい…」


ナメクジに好かれても嬉しくない。ちっとも。
喜三太君はすごく楽しそうにこっちを見てるし、庄左ヱ門君はたしなめてはいるけれど助けてはくれないし。
やっぱり率先して動いてくれるのは作兵衛君だった。てきぱきと平太君に指示を出し、どこからともなく取り出した箸で引っ付いたナメクジを取り除く。

ものの数分で留三郎先輩は駆けつけてくれた。平太君は相当頑張って走ったのか、すごく息が荒い。


「食満せんぱぁい、ここです…っ」

「大丈夫か、夕璃……」

「だ、大丈夫じゃないです…留三郎先輩?」

「……夕璃」

「へ?……っ!!!」


ようやく助かった…と思っていると、静かなこの場にカシャッというシャッター音が響いた。
意味が分からなくて辺りを見渡す。音の発信源は留三郎先輩の手にある最新式のアイフォン。

あ、高画質のやつだ…じゃなくて、何で写真なんて撮ってるんですか!!私を助ける気ゼロですか!?


「け、食満先輩っ何やってるんですか!?」

「夕璃、こっち見てくれ…いい感じだっ」

「お、お兄ちゃんの…馬鹿ーっ!!!」


作兵衛君の必死の形相をよそに、留三郎先輩、もといお兄ちゃんは連写を駆使して私をとり続けている。

か、カメラ越しに私を見ないでください。
そして鼻息荒くしないでください。この変態っ!!



頼ってください。
(精一杯頑張りますから!)

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