20

今日はきっと、私の中の何かが変わる。

そんな一日になりそうな気がする。



***



膝丈くらいのオフホワイト色のワンピースに紺色のカーディガンを羽織る。足下は、あんまり履き慣れていないブラウンのパンプス。
斉藤君とお出かけの約束…着ていく服とか、本当にこれでいいんだろうか。
斉藤君はおしゃれさんだから、私だけ行って浮かないかという心配をしてしまう。


「これでいい、かな?化粧とかも…よく分からないし…」


普段は化粧をしないから、こういう特別なときに困ってしまう。
やっぱり、山田教頭先生とかから習っといた方が良かったんだろうか?


「(もう時間もないし)…じゃあ兄さん、行ってきますね」

「お、おう…」


同級生や先輩たちには言わなかったけど、兄には今日の外出のことを話した。今日は少し遅くなる予定だから、心配をかけないためだ。

あ、もうすぐ時間だ。玄関の姿見で髪型、服装を確認してから家の扉を開けた。
目指すは駅前、話によると遊園地に行くそうだ。今からドキドキするなぁ…。



***



※竹谷視点


家のドアがぱたんと音を立てて閉まり、夕璃が家を出たことを確認した。よし、俺も行動開始だ。


「…あ、もしもし三郎か?雷蔵もいるんだな。夕璃が家を出たぞ。…ああ、斉藤とあの遊園地に行くらしい…よし、現地集合だな。多分滝夜叉丸たちもいるだろうし」


取り出したケータイで三郎と雷蔵、それに兵助と勘右衛門にも連絡した。

今日外出することは事前に聞いていたが…探りを入れてみたところ、よりによってタカ丸さんと二人きりで出かけるなんて。夕璃にはまだそういうことは早すぎると思うんだ!
どこに行って何をするかなんてことは、三郎と勘右衛門の情報網によって手に入れている。
俺たちが目指すは、夕璃たちが楽しんでいるであろう遊園地だ。



***



「斉藤君!遅れました…」

「大丈夫、夕璃ちゃんは時間ぴったりだよ。僕が楽しみで早く来すぎただけ」

「そ、そうですか…」


待ち合わせ場所の駅には今時ファッションに身を包んだ斉藤君がすでにいた。
いつもの金色の髪も、なんだか今日は一段と眩しく見える。


「夕璃ちゃん、今日の服装すごく似合ってるねぇ」

「本当ですか?…斉藤君はお洒落だから、何着ていこうか迷ったんですけど」

「僕のために迷ってくれてありがとう。大丈夫、僕と並んで歩いてたらカップルに見えるかもね」

「…えぇっ!?そんな、ごめんなさいっ。私なんかとカップルに見えるなんて…斉藤君も迷惑でしょうし」

「ううん、全然!!…さ、行こうか」

「は…はいっ」

そう言って優しくエスコートしてくれた斉藤君。きっと、私がヒールのある靴を履き慣れていないってことも気づいてるんだ。
こんな優しさに、私の心臓はどきどき鳴りっぱなしなんだけどなぁ…。

少し周りの視線が気になるけど、今日くらいは斉藤君に吊りあえるように頑張ろうと意気込んで、二人で電車に乗り込んだ。



お洒落しました。
(今はこれが精一杯ですが)

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