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つい最近まで知らなかったのだが、斉藤君も追試だったらしい。
なんとか合格したと聞き、やっと自由になったからみんなでどこかに遊びに行こうと言うのだ。そのことについて、今一年い組の教室で話し合いをしている最中だ。


「うーん、カラオケとかはどうだろうか?」

「そう言えばこの五人で行ったことなかったよねぇ」

「カラオケ…ですか」

「いいね、三木ヱ門の提案!僕賛成だな」

「だが、夕璃が行くかどう「行きましょうっ」…えっ!?」


私が行きたがるかどうかについて悩んでいた平君を始め、みんなが驚いた顔をした。
え…そんなに意外なんだろうか?


「みんなでカラオケ、行きましょう。テストも終わりましたし…息抜きも必要ですし」

「夕璃…カラオケ、好きなのか」

「はい。歌うこと、好きなんです」


私の一言であれよあれよといううちに話はまとまり、早速今日の放課後に最寄りのカラオケボックスに行くということになった。

カラオケ、歌ってやろうじゃありませんか。



***



残念なことに、私は今までカラオケにこんなに大勢で行ったことなんて一度もない。
せいぜい兄さんや家族と何回か行った程度で…ほとんど人目を忍んで一人で行っている。寂しい。

到着して受付を済ます。誰もお腹が空いていないということで普通にルーム料金だけで入った。さすが学割料金、お財布に優しい。


「楽しみだねぇ」

「はい…みなさん歌がとても上手そうです」

「当然だろう?この滝夜叉丸は歌舞音曲の才能も素晴らしく…」

「まーたぐだぐだ喋るの始まっちゃった」

「私も負けてはいないぞ?滝夜叉丸、今度は曲の採点で勝負だ!」

「受けて立とうじゃないかっ」


部屋に案内される前にまた二人が言い争いを始めてしまった。
それをなだめる私たち。もうなんかこれが日常と化してるのはどうかと思うんですけど…あぁもう、店員さんが心の中ではすごく迷惑そうに笑ってます!!




「♪〜♪〜〜」

「〜〜♪♪〜」

「…上手ですねぇ」


流石自分で上手いと言うだけある。ウチの学年のアイドル二人組は序盤から交互に曲を入れ、そしてどれもほぼ完璧に歌いあげ、点数では90点台を連発していた。
歌っている時の二人はすごく堂々としていて、私なんか手が届かないくらいにきらきら輝いている存在だった。きっとこういう人たちが将来大物になるんだろうなぁ。


「こ、ここまでは互角というところだな三木ヱ門」

「何を言う滝夜叉丸、これから私がお前を引き離す点数を出すんだっ」

「…何でもいいけど僕たちも歌いたいなー」

「そうだね。滝夜叉丸、デンモク僕に貸して?」

「は、はいどうぞタカ丸さんっ」


独占していたマイクをタカ丸さんに渡す平君。田村君のマイクも綾部君が半分無理矢理奪っているみたい。仲良く歌ってほしいんだけど…それからすぐにピピっという電子音がし、斉藤君と綾部君が入れた曲がモニターに表示された。


「タカ丸さんはKポップですか」

「うん。僕も歌には自信あるよ」

「(イメージぴったりなんですけど…)」

「喜八郎はまたずいぶん思い切ったな」

「僕は好きなの歌うからねー」

「(あ、綾部君がロック…だと!?)」


びっくりしながらも私の目の前で歌う二人はやっぱり上手で。この学年のレベルは顔といい歌といいどうしてこんなにも高いんだろう…なんてことをずっと考えていると、マイクを取られてふてくされている様子の平君と田村君が私に近寄ってきた。


「夕璃は何か歌わないのか?」

「そうだぞ。せっかく来たのに、もったいないではないか」

「そ、そうですよね…じゃぁ……」


二人が渡してくれたデンモクで曲を検索して、目当ての曲を見つけて送信ボタンを押した。
画面に表示された曲名を見て、斉藤君が声をあげた。


「あ、僕この曲知ってるよ。ネットで話題のやつだよねー」

「そ、そうです…よかった、知ってる人がいて…」

「夕璃の歌、楽しみにしているぞ」

「ああ」

「あ、あんまり見ないでくださいね…」


ちょっとみんなの視線が気になる。今まで体験したことがない注目のされ方だ。

スピーカーからこの曲の軽快なイントロが流れ始めた。
そして画面に歌詞が表示され、緊張しながらも私は歌いだした。


「♪位置についてよーいドン!って♪〜」


一度歌い始めれば自然と身体も軽くなっていく。みんなの視線も気にならないくらい。
やっぱり歌うことってすっごく楽しい!!


「!!…す、すごい…」

「うわぁ!」

「夕璃かわいーっ」

「これほどまで、夕璃が上手とは…」


サビを歌い、二番に入った。みんなもノリノリでリズムをとってくれるから私としてもすごく楽しい。
…これは、いつも一人の時しか言わない歌詞の中の台詞、言っちゃってもいいかもしれない。


「テンションMAX!!いっけーっ!!!」


気持ちが高ぶりすぎてほとんど叫んだ風になってしまったけど、私もすごく気持ちよかったし自然とみんなも笑顔になっていた。

その後も一緒に何曲か歌い、心の中にあったもやもやや、最近感じていたのストレスも、色々どこかへいってしまった気がした。



歌いましょう。
(そうでもしなきゃ、やってられません)


song by 放課後ストライド(GUMI)
※某Pの最近有名なボカロ曲です。百華繚乱の夢主のテーマソング的なものだったりします。

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