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今日は、テスト最終日。

この学校に来て初めてのテスト、今までにないくらいの緊張や不安があったけど、同級生や先輩方のお陰で何とか全てやり遂げることができた。
特に、最後の科目が終わった時の達成感は何ともいいがたかった。

テストが終わっ学級委員長としての仕事もなく、みんなは勉強疲れを癒すためどこかへ出かける人もいるみたいだ。

でも私は、感謝を伝えたい人がいる。
私は急いで荷物をまとめて歩きだした。目指すは、あの人がいる場所へ…



***



※滝夜叉丸視点


私にとってテストとは、トップであることを示す手段である。だから手を抜いたりすることは一切なく、私も全力で取り組んでいる。
しかし…認めたくないが、いくらこの私でも一人ではトップには立てていないだろう。
本人の前では言いたくないのだが、三木ヱ門も立派な私のライバルたる存在なのである。

かく言う私は現在、美術室でキャンバスと向き合っている。所属している美術部今度のコンクールでも一位を取らなければいけない。
今日はテスト終了後ということで喜八郎もすぐに帰り、今この教室には私しかいない。
私は筆を持ち直し、パレットから色を取ろうとしたその時、扉ががらりと開いた。
そこにいたのは予想外で、そして今一番会いたいと思っていた人物だった。


「平君っ」

「夕璃!?もう帰ったんじゃなかったのか!?」

「平君を探してたんです。平君に一番に、伝えたいことがあったから…」


伝えたいこと。そう告げる夕璃の唇から目が離せない。
彼女がなぜかいつもより美しく見えたのは、気のせいではないだろう。静まれ、私の心臓。

今この瞬間だけ、いつもより油絵の具の臭いが濃く残っているように感じる。
私は、静かに彼女の言葉を待った。


「…あの、勉強教えてくれてありがとうございました」

「へぇっ!?」

「教えてもらった問題が出たんです。その時平君のこと思い出して…教え方、すごく分かりやすかったからちゃんと解けたと思うし…本当に、ありがとうございます」

「そ、そのことか…いや、礼には及ばない。成績トップの私として当然のことをしたまでだ」

「…いつもの平君ですね。安心しました」

「安心、とは?」

「さっきまでの平君…絵を真剣に描いていたから。その目が、怖いって訳じゃないんですけど」


返ってきた答えは些か予想外のことではあったが…あぁ、何ということだろう!夕璃が、テスト中に私のことを思いだしてくれるなんて…!!

しかし、彼女の言葉から察すると少しは私の姿を見ていてくれたということではないだろうか。
確かに絵はいつも真剣に描いているが、怖いと思われていたのは心外だ。…これからは気をつけなければいけないな。


「あっ、違うんです!平君が怖いって訳じゃなくて…何かに真剣に取り組む姿、とても素敵だと思います」


私が気分を害していると思ったのか、口早に訂正している夕璃。
そして私に微笑んでくれる。その目元、口元…美しい。なんて美しいんだろう。


「そ、そうか…あの、よかったら私と一緒に帰らないか?」

「いいんですか?まだ部活があるんじゃ…」

「なに、そろそろ終える予定だったんだ。いいか?」

「…はい。じゃあ一緒に帰りましょう」


私は急いでパレットや絵の具を片づける。せっかく夕璃と一緒にいられる時間ができたんだ。少しでも長くしたいではないか。

少しずつオレンジがかっている夕空の下、二人で道を歩いている時、やっぱり夕璃は笑っている姿が一番美しいなとか、この時間が永遠に続けばいいのにとか、そんなベタなことを思っていた。



テスト期間、終了しました。
(お疲れさまでした)

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