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テストまで残り五日。成績がいい同級生や、委員会の先輩方に助けてもらいながらも、勉強は順調にスケジュール通りに進んでいます。

でも、どうしても苦手教科というものは存在するわけでして…。



***



四時間目は化学の時間。そして、私が一番憂鬱な時間。
一応どの教科も平均点以上をとっている私でも、どうしても化学だけは理解できない。
元素とか実験とか…何のために存在してるの!?私はどうやって勉強すればいいの!?


「静かにしろ!授業はもう始まってるんだぞ」

「(そう言えばチャイムが鳴ってて…っていうか、な、何で!?)」

「えー、本日はテスト前なので各自化学の自習とする。そして、私が自習監督の土井だ。みんな久しぶりだな」


そう言って私たちに笑顔を向けたのは、久しぶりに会った土井先生だった。
一年は組のみんなといた時とは違って、ちゃんとした教師の顔である。

でも『久しぶり』って…どういうことだろうか。みんなは先生のこと知ってるのかな?
近くの綾部君に訪ねてみる。


「…土井先生、久しぶりってどういうことですか?」

「ん?夕璃って土井先生知ってたっけ?」

「…前にいろいろあったので」

「先生は二年前、中等部で僕たちの学年を担当してくださっていたんだ」

「へぇ、そうだったんですか」

「だから僕たち化学は基本得意だよ。先生の授業分かりやすいし」


そっか、だから平君や綾部君はこの前家に来たとき私に理科を教えてくれたのか。
…って綾部君!私に話し終えた途端に机に伏して寝ようとしないでくださいっ。

まぁ、謎も解けたので私も教科書と問題集を広げノートに書き込みを始めた。
…はいいもの、やっぱり解答をみても全然理解できなかった。な、なんでこの気体が発生するんだろう……。

辺りを少し見渡せば、クラスのみんなは黙々と手を動かしシャーペンを紙に走らせていた。
ちょっとぴりぴりとした雰囲気だけど、分からないんだから仕方がない…私は土井先生に質問するため、静かに手を挙げた。


「永嶋…どうした、どこが分からない?」

「ここなんですが…式のたて方が分からなくて」

「あぁこれか。この二つを混ぜると二酸化炭素が発生するだろ?だから式は…」


問題集の例をあげながら丁寧に説明してくれる土井先生。
図解や公式の覚え方なんかも教えてくれたし。さすが、あの一年は組を教えてくれているだけあるなぁ。


「ありがとうございます。助かりました」

「!そうか…よかったよ。また何かあったら言ってくれ」

「はい」


また教室内を見渡し始めた土井先生。あ、綾部君の頭をつっついてる。

そんな様子をちょっと見ながら、私はもう一度問題集を解き始める。
元素記号は…っと。覚え方を教えてもらったので、すごく理解できるようになった気がする。


「土井先生」

「ん?どうした永嶋??」

「ありがとうございました。お陰で化学、何とかなりそうです」


授業が終わってプリント類をまとめて帰ろうとしていた土井先生を呼び止めてお礼を言った。
返ってきた先生の笑顔を見ると、今度のテスト、頑張れそうな気がする。

…そんな私たちの様子を、平君と綾部君の二人が見ていて、土井先生だけをものすごい形相で睨んでいたのには気づかなかったけど。



テスト勉強、順調です。
(苦手な教科、克服しました)

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