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「お前らも分かってると思うが、一週間後は前期中間テストだからな!しっかり勉強しとけよ」


帰りのホームルーム、担任教師のその一言でクラスが少しざわついた。周りからは苦手教科に対する不安やテスト自体を非難する声までがあがる。
かという私はそのどちらでもなく、これからの勉強のスケジュールなんかをたてたりしていた。

ホームルームが終わった後、平君と綾部君が私の席の近くに座る。そして隣、さらに隣のクラスから田村君と斉藤君が来た。
なぜだか分からないが、ここ数日は放課後、私の周りにこの四人が集まってくるのだ。

そして話題は、必然的にテストの話に。


「みんなでテスト勉強したいね」

「タカ丸さんはほんっとーに成績やばいからね」

「夕璃ちゃんは?編入して初めてのテスト大丈夫そう?」

「…正直少し不安です。分からないところもあって」

「何だと?では、この学年トップの成績の平滝夜叉丸が丁寧に教えてさしあげよう」

「いや、夕璃に教えるのは優秀なこの私、田村三木ヱ門だっ」

「み、みんなで勉強できればいいですよね」

「じゃぁ、みんなで夕璃の家行こーよっ」

「…夕璃の家」

「いや、私のっていうかいとこの兄の家なんですけど…来ますか?」

「「「「行くーっ」」」」


声をそろえて返事をした四人と一緒に教室を後にする。
このアイドルたちを私が引き連れているんだと思うと、すごく恐れ多くて気恥ずかしかった。



***



「(ど、どうしよう…)」


流れで私の家に来ることになってしまった同級生たち。

私が、というか兄が住んでいる家は一軒家で、兄の母、つまり私の叔母が昔住んでいたところを貸してもらっているらしい。
だからリビングがあってキッチンがあってお互いの部屋もある結構広いお家なんだけど…。


「(兄さん…また服片付けないで行ってる)」


入ってすぐのリビングには兄が今朝脱ぎ散らかしたであろうTシャツやらがあった。もう、いつも自分の服はちゃんと洗濯機に入れてって言ってるのに…。

その問題の兄はというと、テスト期間ということで所属しているサッカー部は休みらしく、今日は図書室で同級生の鉢屋先輩や不破先輩と勉強するらしい。
あの二人に任せておけば兄さんの成績も安心だ。


「…あの、飲み物とか持っていくんで…階段を上がって突き当たりの部屋が私の部屋なんで、先に入っていてもらえますか?」


なるべくこの惨状を見せないようにしながら声をかければ、四人は大きく頷いて階段を上がっていった。

さて、私も準備しなくては。
コップやらをトレイの上にのせ、階段を上がって自室の扉を開けてみれば、部屋の中央にあるそんなに大きくはない丸テーブルを囲むように正座している同級生たちの姿があった。


「(何で正座?)…おまたせしました。あの、お茶とオレンジジュースどっちがいいですか?」

「僕オレンジジュースっ」

「こら喜八郎、危ないから机を叩くな!」

「私はお茶をいただこう」

「僕もお茶がいいな」


一応冷蔵庫の中にあった飲み物を勧めてみると、綾部君と平君はオレンジジュース、田村君と斉藤君はお茶がいいということでコップに注いであげた。こぼさないだろうか、ちょっとびくびくしちゃったけど。

そんなに大きくもない私の部屋に五人も集まったのは初めてだ。
飲み物を飲んでお菓子をつまみながら勉強を開始する。


「夕璃っ、僕にノート見せてくれない?」

「いいですけど…授業中また寝ていたんですか?」

「穴掘りって疲れるんだよねぇ…まぁ楽しいからやってるんだけど」

「ねぇねぇ、喜八郎くんの成績はどれくらいなの?」

「んー…真ん中くらいかな」

「(そ、それでも真ん中なんだ…)」


さすがい組だねぇと斉藤君ののんびりした声が聞こえる。
みんなで勉強し必然的に成績の話になった。気になるのは優等生のライバル二人。


「じゃあ滝夜叉丸くんと三木ヱ門くんの成績は??」

「もちろん!この平滝夜叉丸は学年一成績が優秀なのだ!」

「それはどうかな?…この前の小テスト、私の方が点数高かったじゃないか!」

「この前はたまたまだっ。私が三木ヱ門に教えてもらうことなど何もない!」

「何だと!?それはこっちのセリフだ滝夜叉丸。こんな問題、私一人で解ける!」

「…じゃあ、家で勉強会やるのはあまり意味なかったんじゃ……」

「「そんなことはない夕璃っ」」

「そ、そうですか…それはよかったです」

「ねぇ夕璃、分かんないとこあったら言ってねー」

「僕にも言ってね。ちょっとは教えてあげられるかもしれないし」

「は、はいっ」

「喜八郎っ抜けがけするんじゃないっ」

「そうだ!それに夕璃、滝夜叉丸なんかよりも私を頼ってくれ!!」

「何だと…やるのか三木ヱ門!」

「それはこっちのセリフだ滝夜叉丸!!」

「ま、真面目にやりましょうよっ」


最終的には平君と田村君の喧嘩みたいになっちゃったけど、その二人の助けもあって効率的に問題集を進めることができた。

綾部君も斉藤君も色々フォローしてくれたし…私はすっごく楽しかったんだけど、うーん、仲良くできたんでしょうか?



テスト勉強、始めます。
(ついでに絆も深めました)

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