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※滝夜叉丸視点


「滝夜叉丸!そっちにはいたか?」

「いや、いない…三木ヱ門の方はどうだ?」

「駄目だ。まったく左門は、会計委員会は今が一番忙しい時だというのに…」

「三之助も委員会をほったらかしてどこにいるんだ」


現在、私と三木ヱ門が嫌々ながらタッグを組み、お互いの委員会総出で中等部三年ろ組の迷子たちを捜索している。
連絡もよこさないで、まったくあの二人はどこへ行ってるというのだ。

でも見つかるのも時間の問題だろう。この私が本気を出せばこんなことちょちょいのちょいだ。
それに、夕璃も私を手伝ってくれているし。彼女は私に劣らないくらいに優秀だからな。


「でも…見つかったとして、どうやって連絡取るの?メアドとか知ってる??」

「「………」」


ふと思いついたようにタカ丸さんが言うが、その言葉に私たちは盛大に固まった。
そ、そう言えば…


「私はクラスも違うし聞いてないが…喜八郎、お前はどうだ?」

「僕も知らなーい。…滝夜叉丸は?知ってそうだけど」

「…夕璃のアドレス、聞いていなかった」

「えぇっ!?じゃあみんな知らないの?」

「滝夜叉丸!あれだけ大口叩いておいて、こんのチキンハートっ」

「う、うるさいぞ三木ヱ門!!」


これは私としたことが、決して彼女に聞く勇気がなかった訳ではなくだな…。

あぁ夕璃、どうか無事でいてくれ。この平滝夜叉丸が見つけだすまでは!!



***



「日も暮れてきたな」

「やっぱり僕たちの方から探しに行ったほうが…」

「動かないでくださいっ更に迷子になっちゃうでしょう!」


中等部三年生の二人と迷子になってから数時間、未だに助けが来ないというか来そうもないくらい山奥にいる私たち。
助けを呼ぼうにもここがどこだか分からないし、そもそも携帯は繋がらないみたいだし、自分はというと二人をどこかに行かないように見張ってるだけで手一杯だ。

そう言えば、ミイラ取りがミイラに、という言葉があった気がする…。ま、まさに私がこれなのか!?

私、これからどうなるのでしょうか…。


「…二人は不安になったりしないんですか」

「「??」」


気がつくと二人がこっちを見ていた。
しまった、思ってたことがつい口に出た。私は後悔して顔を歪めたが、気にしない様子で神崎君が聞いてきた。


「不安にって…何がだ?」

「…もし、誰も私たちを見つけてくれなかったらって。助けてくれなかったらって、考えはしないんですか?」


そう言って思い出すのは、過去の自分の惨めな姿。

転校ばかりで友達はできなかった。いや、それも親の仕事のせいにしてただけで、本当は自分自身で努力をしなかっただけかもしれない。
授業中も、休み時間も、いつだってずっと独りぼっちで、本当は寂しかったんだ。
それでも必死に、それに慣れようとした。そうしたはずだったのに…。

この学校に来て、たくさんの友達ができた。ちょっと個性的な人ばかりだけど、みんな私によくしてくれた。初めて学校が『楽しい』と思えたんだ。
それなのに…ここにずっといるなんて……


「(そんなの…すごく、悲しいじゃないか)」


段々と私の目には涙が溜まってきた。
まずい、変な人だと思われてしまう。慌てて服の袖で涙を拭ったが、まだ少しぼやけている視界で見えたのは、きょとんとした様子の迷子二人。

すると突然彼らは笑いだした。意味が分からない。


「なんだ、そんなことか」

「もっと深刻な話かと思った」

「じ、十分深刻な話ですっ」


思っていても涙はなかなか止まらない。目尻が赤くなってるだろう…格好悪いな。
そんな私なんてお構いなしに次屋君がすまし顔で答える。


「その答えなら、ノーだな」

「あぁ!考えたこともないな」

「えっ!?な、何で…」

「俺たちは信じてるからな」


そう言って次屋君は神崎君を見やる。神崎君も笑顔でそれに頷いて、二人で口を合わせた。


「「絶対、見つけてくれるって!」」


その声と同時に、後ろの方でガサガサっと茂みをかき分ける音がした。


「左門っ、三之助っ!!」

「おー作兵衛ーっ」

「やっと見つけたぞ!僕たちが必死で探したんだ」

「探してたのはこっちだ!お前らはいっつも、俺に心配かけやがって!!」

「二人とも大丈夫?怪我してない?」

「ん、へーき」

「お前らのせいで俺の予習の時間が減ったじゃないか」

「孫兵も探してくれるなんて、珍しいな」

「お前ら迷子のためじゃない、夕璃先輩のため…って先輩!大丈夫ですか!?」

「う、うん…大丈夫」


急に増えた人数にもびっくりしながら私は頷く。伊賀崎君は相変わらずジュンコちゃんと一緒だった。
他にも前髪が特徴的な真面目そうな子と、ふわふわしてて優しそうな子も一緒だった。
中でも神崎君と次屋君に怒鳴っている子、彼が二人が探していた作兵衛という子らしい。


「あの…ありがとう。助かりました」

「いえ。俺は中等部三年ろ組の富松作兵衛です。俺の方こそ、こいつらを抑えといてくれてありがとうございます」

「高等部一年い組、永嶋夕璃です。本当にありがとう」

「は、はい!…先輩が無事で、安心しました」

「作兵衛ずるいぞっ。俺は三年は組の浦風籐内です」

「僕は三年は組の三反田数馬です。怪我したら言ってくださいね、僕保健委員ですから」

「あ、ありがとう三反田君、浦風君」

「あれ?作兵衛、まさか惚れちゃった?」

「夕璃先輩の笑顔は凶器だね」

「あぁ。素敵な先輩だなぁ…」

「言っておくけど、作兵衛にも先輩は渡さないからな」

「べ、別に俺はそんなつもりじゃねえよっ!だからジュンコも俺を睨むな!」


計七人(プラス一匹)に囲まれて身動きが取れない。
しばらく森の中にいたけれど、薄いが月も見えてきたので、それからは全員でどたばたしながら家路についた。

その時ふと、なんでだろう…信頼できる人とか自分を大切に思ってくれている人がいることが、すごく、幸せなことに思えたんだ。



救出されました。
(『友達』って、すごくいいな)

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