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放課後、何もすることがないなら自宅に帰ろうかと荷物をまとめていると、慌てた様子の同級生がやってきた。
いつも仲が悪いというかライバル心を持っている二人が同じことを頼んできたのもびっくりなのに、話を聞いてさらにその内容にもびっくりした。

それを了承してしまった昔の自分をちょっと恨む。まさか、あんなことに巻き込まれるなんて。



***



「「頼む夕璃、お前も協力してくれ!」」

「…えっ?」


廊下からすごい勢いで私の机の前に来たのは、日頃仲良くさせてもらっている平君と田村君。相当走った後らしく、二人とも少し息が乱れている。
汗がきらきら光って眩しいなぁ…とか考えてたら、二人は私に向かって同時に頭を下げた。
自称アイドルの二人がこんなことするなんて…なんか恐れ多い感じがする。


「な、何を協力すればいいんですか…?」

「実は…私たちの委員会の後輩がいなくなってしまったんだ」

「いなくなった?」

「正確には迷子になってしまったということだ。あぁ、この滝夜叉丸がいながら…」


平君の自分語りが始まりそうだったので隣の田村君が肘鉄して止めた、痛そう。


「わ、分かりました。出来る限り協力したいと思います…えっと、誰を探せばいいんでしょうか」

「体育委員会のつぎ…は、離せ三木ヱ門!」

「私が先に話すんだっ、滝夜叉丸は引っ込んでろ!」

「ひ、一人ずつお願いしますっ」


このままだと二人がもみ合って全然話が進みそうになかったので、私の方から話すよう促す。


「無自覚な方向音痴の、体育委員会中等部三年ろ組の次屋三之助と」

「決断力のある方向音痴、会計委員会の中等部三年ろ組の神崎左門だ。夕璃、見つけたら連絡してくれ」

「わ、分かりました…頑張ります」


順番に話してくれて助かったが…何だろうその二つ名みたいなのは。
本当はすごく関わりあいになりたくないのだが仕方ない、いつも仲良くさせてもらっている二人の頼みなのだから。

私は最初に聞き込みをするため、荷物を持って教室を飛び出した(刑事ドラマみたいでちょっと楽しんでたりする)。



「(んー…でも、どうしたらいいんだろう…)」


何人かに聞き込み調査をしてみたが、彼らのことはいつものこととして処理されているらしく、誰からも有力な情報は手に入らなかった。
こ、コミュ障の私が勇気だして聞いたのになぁ…(全部ちょっとは面識ある人にだけど)。

ちょっと考えごとをして歩いていたので、前から人が来てるとは思わなかった。
気づいたときにはもう遅く、誰かの肘あたりと私の鼻が綺麗にぶつかった。
じ、冗談抜きで本当に痛い!!鼻血出てないかな…心配だ。


「す、すみません!私の不注意で…」

「何してるんだ三之助!」

「すみません…ところで、一人で何してるんですか?お姉さん」


私にぶつかってしまったのは背の高い男の子だった。前髪だけなぜか色が違って、ツリ目でちょっと怖い感じがする。
隣にいたのは綺麗な深緑色の髪の男の子。なんか…小動物っぽいなぁ。

比べてみると、二人は随分身長差があった。でこぼこしてる。


「人を探しているんです。えっと、中等部の二人で…」

「よし!僕たちも協力してあげよう」

「そうだな。丁度俺たちも人を探してたし、一緒にいたら見つかるかもしれないしな」


私が入る隙もないくらい二人で会話が進んでいて、会話が終わったと思うと背の高い子に手を引かれて校舎の外へ連れて行かれた。け、結局何も言えなかった…。

彼らと一緒に探して、神崎君と次屋君が見つかればいいんだけど…。



「あの…ここ、裏山なんですが…本当に探してる人はここにいるんですか?」

「おかしいな…俺たちは学校に行きたいんだけど」

「が、学校って真逆のはずですよ!本当に道合ってますか!?」

「…さぁ?」

「合ってる!司馬法いわく『進退は疑うなかれ』だからな!」

「あ…えぇっと……」


間違いない。この二人が私たちが探してる『決断力のある方向音痴』と『無自覚な方向音痴』…。


「あ、貴方たちが神崎左門君と次屋三之助君ですね…」

「?…何で僕たちの名前知ってるんだ?」

「まさか…スパイとか?」

「同級生の平君と田村君に聞いたんですっ」


スパイって…何の?
とりあえず、二人とも行くあてもなく直感で進もうとするのをやめてほしい。っていうか抑えるこっちの身にもなってほしい。


「でも左門、俺たちのことが知られているのに俺たちが彼女のことを知らないなんて不公平だよな」

「ああ、不公平だ。ということで」

「…不公平?えっ??」

「「名前教えて、お姉さん」」

「…高等部一年い組の永嶋夕璃です。これでいいですか」

「夕璃か!いい名前だな」

「ってことで夕璃」

「僕たちと一緒に」

「作兵衛探すの手伝ってくれよ」


不公平を理由に名乗らされたけど、私が先輩だと知っても敬う気ゼロみたいだし。
私はその場の流れでその作兵衛君という子を探さなければいけないらしい。おまけに空はオレンジがかってきて、もうすぐ日が暮れそうだ。

これから私、どうしたらいいのでしょうか。



迷子になりました。
(た、助かるんですかこれ…)

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