短編 | ナノ



無自覚自覚、
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『女子力とは何か」

「お?」

めずらしく名前ちゃんから電話かかってきたかと思えばその質問。聞けばアニメやゲーム目的で街に行かず、普通の女の子がするようなことをしたいらしい。

『それを今度学びに行きたいのでぜひ付き合ってくだせえ』

「名前ちゃんの友達は……あと松田」

『朋ちゃんはなんか予定あるらしい。松田は仕事だってさ。だから最終手段で萩原に電話してみた……その……だめ?』

普段からは絶対ない甘え声に不覚にもきゅんとしてしまった。

「そうだなあ。俺、明日休みだし明日にでも出掛けるか? ってかいつの間にそんなの覚えたの?」

『やった!! 恩にきるよ萩原! 覚えたって何が?』

無自覚らしい。彼女は色々な二次創作に触れてるから無意識にも覚えていた、ということにしておくか。時間と、集合場所だけ聞いて電源を切った。大抵遊びに行く時は松田や他の警察学校の連中と一緒だから二人きりは高校の時以来かもしれない。

『やあ』

先に集合場所で待っていると早速女子っぽくない挨拶でやってきた。洋服は女の子らしく可愛い。本人に似合っている。

『おお、今日の萩原カッコいいぞ』

普通の恋人同士だったら素直にカッコいいなんていってくれるだろうか。あくまで俺たちは?友達"だからその感覚で名前ちゃんも何食わぬ顔で言えるんだと思う。

「せっかくのデートだから気合い入れてみたんだ」

『デートって画面の向こう側でしか体験したことないや……』

ほらやっぱり。画面の向こう側が少し羨ましく思う。

「それじゃあ名前ちゃんの女子力探しに行きますか」

「おー!」と元気よく言ってる隙に俺はさり気無く名前ちゃんの手に繋いでみる。

『え、急にどうしたの……』

やはり少しは抵抗される。どことなく恥ずかしがっているみたい。

「これも女子力アップのひとつかなって思いまして」

『うー……はずかしいけどそれならしょうがないかぁ……』

一度離された手はまた俺の手に繋がれた。俺もギュッと繋ぐ。
不意を突かれて照れている時の名前はとても女の子っぽい。

『そもそも今時の子たちはどんなことしてるんだろう……』

流れで原宿に来たのはいいけど名前ちゃんは人並みにビビって俺の後ろに隠れる。

『ここは……言質調査だ……そこの可愛いお嬢さん方少しいいかな?』

ちょっと待ってて、と名前は近くにいた女子の集団に入っていく。見知らぬ人と関わるのは苦手なのに仕事で慣れて来たのか結構なこと情報を聞き出していた。

「なんか聞けたー?」

『うーん、基本はウィンドウショッピングであとノリと流れだって……あと綿あめ勧められた』

「とりあえずそこ行ってみよう」

お店に行くと思いの外でかい綿あめがあってとりあえず一本だけ買う。

『綿あめなんて食べるのお祭りの時以来だなー』

甘い、美味いと幸せそうにちぎって食べている。

『ほい、萩原あーん』

「え……」

この子はどこまであざといのだろうか。無自覚だからなおさらタチが悪い。

『あ、こういうのやっぱ彼女にやってもらいたい?』

「そんなことないよ!いただきます!」

やめられてしまう前に名前の手をとりその綿あめを食べる。お返しにはい、と綿あめを名前ちゃんの口元に持っていくと少し恥ずかしそうにしながらもパクリと食べてくれた。そしてその瞬間をカメラに収めた松田に送りつけてやろう、彼女と原宿なうと名前が美味しそうに綿あめを方張っている写真を送る。そして一通り原宿を見回り適当な喫茶店に入る。

『結局綿あめを美味しくいただいただけだった…….』

「まあそんなすぐ身につくような問題じゃない、というか俺はハート鷲掴みされたけどねえ……」

『でも久々にヲタ活以外の事した気がする』

普段店で食べることに慣れないパンケーキを一生懸命ナイフとフォークで切りながら口に頬張る。頬張った瞬間彼女の目がキラキラしてコロコロ表情変わって可愛いな、と俺は眺める。

「俺も今日は名前ちゃんの意外な一面知れて楽しかった」

『えー、例えば?』

やっぱり今までの行為は無自覚だったらしい。またパンケーキを俺の口元まで差し出して俺は迷わずそれを口に含む。

「名前ちゃんが可愛いってこと」

『うぅっ……この先萩原の恋人になる子が羨ましいよ……』

また思わせぶりなことを言っているけど項垂れている辺り脈ありなのだろうか。

「俺は名前ちゃんの恋人になりたいなあ」

『え?』

「うん?」

理解が出来ていないのか、それは一瞬で顔がみるみる赤くなっていく。

『こ、こういうのって外だとなんとかなるもんだけどやっぱ座って面向かって言われると……え、ほんと……?』

あまり騒ぎを立てずに小声でぐいっと、身を乗り出して聞いてくる。

「ほんと。名前ちゃんが好きです」

俺も身を乗り出しながら小声で告白する。
顔は喜んでるのか泣きそうなのか分からないけど、とりあえず周りを気にしているらしい。

『っ……言うの帰ってからでもいい?』

「もちろん」

行きと違って帰りは口数が少なくなってしまったけど名前ちゃんちに着けば今まで我慢していたのを解放するかのように彼女は俺に抱きついてきた。やっぱり意識すると恥ずかしがり屋になるタイプのようだ。

『結局女子力は分からなかったけど、画面の向こう側のヒロインの気持ちは分かったきがする……』

「俺をこういう気持ちにさせたんだからある意味女子力上がったんじゃないかな。ところで名前ちゃん、返事は?」

『もー……好きに決まってるじゃんバカ……』

うん、可愛いと俺も改めて彼女を抱きしめた。その後松田から返事が来て中身見れば「おまえらそろそろ付き合い始めたか?」
の返信が。

「ねえ名前ちゃん。これ、どういうこと……?」

『あー……あー……』

「なんで目を逸らすのかなあ?」

どうやら松田の策略だったらしい。結果的に良かったものの釈然としなく、このあと名前ちゃんをめちゃくちゃ可愛がった。


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