短編 | ナノ



おやすみ前の子守唄、
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夜中、消灯三十分前、トイレから部屋へ戻ろうとしている時、歌が聞こえる。苗字名前だったか。そいつは歌が上手く、よく警察の音楽隊で駆り出されている。また次何かに駆り出されるのか練習しているのだろう。耳障りなんかではなく、むしろ聞いていて心地よい。この消灯三十分の部屋とトイレの行き来の時間が唯一の楽しみだったりもする。

『松田君?』

「おう、今日はもう終わりなのか?」

澄んだ声はいつの間にか近くにあり一瞬驚くがあくまでも冷静さを装う。

『うん。早く思いっきり歌いたいなあ』

そう言い目をキラキラさせながら夜空を見上げる。月、綺麗だねなんて随分ロマンチックな事を言うもんだ。その顔を横で見ている俺の頬は柄にもなく緩んでいると思う。

『それじゃあ松田君も訓練に響かないよう早く寝るんだよ』

お休み、と笑いながら女子寮へと戻っていった。これだけで一日の疲れ吹き飛ぶ。普段降谷や伊達と同等にやり合ってるとは思えない女だ。

「あ、松田頬めっちゃ緩んでるーさては名前ちゃんに会ったな?」

「うるせぇバーカ」

酷いと嘘泣きをかます萩原を横に電気消すぞと消灯し、俺はベッドに横たわり、決まって消灯前に名前に会った日はよく眠れる。今もゆっくりと瞼を閉じる。


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