崇拝のキス
彼氏である俺の家に来て「昼寝」するっていうのは俺に「襲え」といっているようなものだと思う

部屋のなかが暖かいからと着ていたコートをハンガーに掛け、パーカーをソファーの上にぱさっと置いたと思ったら靴下を脱ぎ捨ててそのままソファーにダイブした
そんでもって飲み物を用意している間に寝てしまった名前をみて、俺はため息を漏らした

「普通彼氏の家でこんなに無防備になるかよ…」

寧ろ俺のこと彼氏だと思ってないんじゃないのか?と思う
俺と名前は保育園のころからの腐れ縁だ
小、中、高とクラスが変わらないまま、なんら変化もなく過ごしてきた
家族も同然だった俺らが今こうしてカレカノになった、その原点は既に記憶からすっとんでいる

そんなことがあってか、名前は以前と変わらないまま俺と付き合い、日々を過ごしている

そりゃぁいきなり態度変わったら驚くけどここまで何もないのも流石に驚くわけだ

「私が周りのこと考えてキヨちゃん呼びから名字呼びにしたとき思考停止したからもうなんもしない。ってゆーか、普段通りがいいよね、やっぱりさ」

ふわりと笑いながらそう言っていたことを思い出す

「だからってこんなに無防備なのは逆に困るんだけどー…」

俺の苦労も露知らず…

近くにあった毛布を掛けてやり、近くに座る
ふと見てみれば、足元までしっかりかかってないことに気づいた

そういやこいつ、足の指長ぇな

すらりとのびた長い足も魅力的だが、滅多に見ない足の指の長さに驚いた

「しかもご丁寧にペディキュアまでしてやがる…足までお洒落はかかさねぇってか」

お洒落は女の子にとって大切なものなんだからね!と以前強がって言ってたな
名前の格言だわ、あれは

…格言
そういえばこの間高尾が「キスの格言」がどーのこーのって言っていた
俺らはまだお互い気恥ずかしくて手すら繋げてないウブな恋人同士だが、俺はそろそろキスくらいしてぇなぁと、考えていた

寝ている名前を、まじまじと見つめる

キス…してぇなぁ…

寝込みを襲うのはどうかと思うけど…

そんなことを考えながら名前の爪先を見る

−−爪先は崇拝らしいっすよ!崇めて拝む…寝ているときとか、気づかれないから一番気持ち伝えられそうっすよね

高尾がそういっていたけど、まず寝てたら気持ちは伝わんねぇよ
崇めて拝むとかそのまんまじゃねぇか、ぜってぇわかってねぇだろ

とか思いつつもやっぱり寝ているからこそ出来ることであって。

「…よし、…」

心を決めて、爪先に唇を当てる












「可愛いことしてくれんじゃん?キヨちゃん」
「!!??」

まさか起きているとは思わなかった
折角隠れてやったつもりだったんだけどな…

「爪先にキスかぁ…。崇拝、だよね」
「知ってたのか」
「勿論。なんか、ちょっと嬉しいな」

ふんわりと笑って、ありがとうと言う名前に、また心が揺れ動かされたのは別の話


.
*<<
TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -