5


輝明とシロネコくん─……元言い、陽太はあれ以来届け物の度にちょっとした話をするようになっていた。
二十二歳年下の男と何故こんなにも楽しく話せているのか。
理由は初めから分かっていた。
輝明は陽太が好きだからだ。
一目惚れだからだ。
好きだから、生きてきた年代や流行が違くても何でも楽しく思えてしまう。
彼の好きなものを語る時、少し頬が染まる癖や身振り手振りが大きくて一生懸命話すとこ。
全て愛おしく思える。

「輝明さんは凄いですよね!俺、小説なんて読めもしなけりゃ書けもしませんもん」

陽太は明るく無防備に笑う。
可愛いな、とそこら辺の野良猫に思うような軽い気持ちで輝明は思う。
そんな気持ちにまで落ち着いてきたのはきっと、気軽に話せるようになったからだろう。 手に届く距離になったから。
その手を掴む勇気などないくせに。

「まぁこの年で会社辞めた奴がまともに再就職出来るとも思えねぇしな」

「そう言えば輝明さんはなんで辞めたんですか?」

陽太は思い出したような顔をして輝明を見た。
輝明は煙草に火をつけ咥え、息を吐きながら返した。

「俺、ゲイだから。異常者には居場所がねぇんだよ」

ちょっと言ってみようと思った好奇心だった。
言ったらどんな反応するのかな、って。
ここまで幸せな時間をもらえたんだ。
ここら辺が潮時なのかもしれない。
若い子の将来の邪魔をする気はさらさらない。
終わるなら終わるでいいし、輝明は何も期待していなかった。
だから言ってしまった。

綺麗に聞こえるただの言い訳を、誰に言われたわけでもないのに必死に心で呟きながら。

……言わなきゃ良かったのに。 言わなかったら、この関係が続いたのに。


しおりを挟む 拍手
prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -