05

曇り無い純白の棺に眠る姫君。生前の名前からは想像もつかないほどに飾りつけられたその姿は文句なしに美しかった。常にフラスコやら毒物やらを扱っていた指は胸で組まれていて、爪は鮮やかな色のマニキュアで塗られている。化粧っけのなかった顔も豪華に飾りつけられている。おもわず見とれてしまうのは仕方ないのだろう。名前を甘く見ていた。病を完治させる薬は完成させることはできなかったが、変わりにとんでもないものを残していた。肉体を生かさず殺さずの仮死状態にさせる棺。此を開けるのは大蛇丸を殺した後にだと決めていた。そしてあけるべき時が来た。もちろん棺の中にはあの絵本。お姫様の目覚めは王子様の口づけって決まっているんだ。だから水をかけられようが、目覚まし時計が鳴ろうが名前は起きない。

―幸せかどうかは本人しか分からない。だからそれを確かめたくて女の子はおとぎ話のお姫様を目指すの。きっと幸せになれるはずだって

名前は確かに死にたがっていた。だがこの棺を完成させ、さも使ってくださいというように放置していた。彼女は期待していたのかもしれない。誰かがこの棺に彼女を収めることを、生き伸びることを。名前は確かめたかったはずだ。おとぎ話のお姫様が本当に幸せになれたかどうかを。きっとこの後の名無しには楽しいことの方がつらいはずだけれど、それでも俺と一緒に来てほしかった。

「…おはよう」
「……」
「感想は無しか?」
「…サスケくん」

名前は有能だった。だが、簡単に眠り病の治療薬を作ったカブトはもっと有能だったと言う話だ。それでも俺は名無しを選ぶ。「ファーストキスだったのにな…」とぼんやり呟く彼女には悪いが、彼女のファーストキスはとっくの昔に俺が貰っている。

何年か先、もしも名前が俺の隣にいた時、「お前は幸せか」と聞いてみたいと思う。

END

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