24

 
リヴァイは言っていた。ライナー達こそが実験をしていた張本人の街人であり、その街を滅ぼしたのが教会であると。つまりライナーとベルトルトは嘘をついていたことになる。リヴァイの部屋で名前は悩んでいた。悩む名前をリヴァイは心配そうに見る。

「いい加減に話せ。何をうじうじしている?」
「えっと、城の人たちのことなんですけど」
「聞いてやる」

名前はベッドに横になって本を読んでいたリヴァイを覗きこんだ。リヴァイは読んでいた本に栞を挟んで閉じる。予備動作無しに起き上がった彼に名前は驚いた。寝具の背もたれに凭れ掛かり、膝を立てたリヴァイは名前に話すよう促す。

「私、ライナー達に心臓を取り返すって約束したんです。彼らが話してくれた話は貴方から聞いた話と少し違っていて」
「……おれは史実としてしか知らない。もしかしたらあいつらの言い分が正しいかもな」
「あっそうか」
「どんな話だった?」

名前はライナーとベルトルトから聞いた話をリヴァイに話した。街の地下で人外を使った実験が行われていることを知ったライナーが領主と揉めて殺してしまったこと、ベルトルトが火を放ったこと。リヴァイは無表情でそれを聞いていた。

「百パーセントの嘘では無いだろうな。どうせ教会が自分たちに都合のいいよう書いたんだろう。街が教会の手に落ちた事実は変わらん」
「ライナー達は外で何が起きているか知りたいらしいんです。実験がまだ続いているなら止めたいらしい」
「じゃあ問題は解決しているな。もう実験はされていない。教会が管理している交配種はいない」
「なんか腑に落ちないんだよなあ」

名前は膝を抱えてうんうん唸る。そうだ、アニだ。ライナーとベルトルトが出たい理由は分かった。だが、アニはどうしてだろう。そう思ったが、此処で働かされるのが嫌なのかと勝手に合点がいった。いや、でもそんな理由だろうか。何か見落としている気がする。

「あ……?」
「いきなりなんだ」
「この城にいる人達は、みんな人間になにかを奪われた奴らだってエレンが言っていました」
「そうだな」
「じゃあ、城の人間たちは同じ人間に何を奪われたの?」

名前は必死で考える。この城には十人以上の人間がいるはず。名前が会ったことがあるのは、アニ、ライナー、ベルトルトだ。では残りの七人はどこにいる?考えてもわからないことは聞くしか無い

「アニ、ライナー、ベルトルト、ハンジ、モブリット以外の人間はどこにいるの?この城には十人以上の人間がいるんでしょう?」
「ハンジの助手にモブリットを入れて四人。こいつらは大抵研究室に篭っている。残りはクリスタとユミルか。あいつらは西の塔の上にいる」
「塔で何をしているんですか?どんな人達?」

質問の多い名前にリヴァイはため息を付きたくなった。城の人間なんざ、知らぬ存ぜぬを貫き通して関わらなければいいものの、とリヴァイは思うが名前はそうではないのだろう。どこか同情的だった。まあ、質問が具体的になっただけでも良しとしよう。

「同じ人類でも教会と対立していたと話したな」
「うん。異教徒ってことでしょう?」
「そうだ。塔にいるクリスタはその宗教の教主の娘だった。迫害された後、逃げ出してここに来た」
「……ライナーたちも異教徒?」
「エルヴィンはそう言っていたな。ああ、ユミルは人間だと言っているがあれは違うな。魔女だろう。西の塔でユミルはクリスタと静かに暮らしている」

上手く頭のなかで繋がった。ライナーが言っていた、クリスというのはクリスタのことだったのだろう。クリスタが逃げるのに協力してもらおうと言いかけたのではないか?

「ライナー達はここを出てどこかに国でも建てる気なのかしら?」
「は?」
「ごめんなさい、ありがとう」

名前はベッドから降りて部屋を出た。リヴァイの呆れたような視線が名前に刺さる。だが、彼は止めはしなかった。枕の横に置いておいた本を手に取り、栞が挟んであるページを開く。窓の下を見ると名前が勢い良く飛び出していくのが見えた。

リヴァイの部屋から飛び出した名前だが、ライナー達が普段どこにいるのか知らなかった。
食堂にもいない。居館を一通り回ってみたがいなかった。名前は彼らの私室がどこにあるのか知らなかったのだ。仕方ない、西塔にいるというクリスタとユミルという人に会ってみようか。名前が西の居館から出て塔に向かおうとした時、彼女の前にミカサが立ちはだかった。

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