02

 
エレン達は部室でテレビゲームをしていた。各界のヒーローや人気キャラクターを戦わせるこのゲームは白熱しやすいうえに両手が塞がる。部室の扉がノックされていたことに部屋の中にいた四人は気がついたものの、出るタイミングを逃していた。ミカサが攻めの手を休めないまま一時停止ボタンを押す。エレンとジャンが抗議の声を上げたものの、アルミンが扉に向かったことで来客を思い出した。基本的にどの部室の扉にも鍵はかかっていない。勝手に入ってくればいいのにと思った。

「……えっと、御用ですか?」

扉をあけたアルミンがまず目にしたのはペトラだった。七分袖の白いワンピースはウエストから折り返しが入っており、膝にかけてふわりと広がっている。スカート部分に淡いオレンジとピンクで花柄が描かれていて、彼女の赤毛と会わせて柔らかい雰囲気が出ていた。薄化粧もあって、同じ大学の生徒だと思ったのだ。この部室にいる誰かを探しにきたのだろうと思ったのだが、彼女の後ろからスーツ姿の男が現れた。その男をみてアルミンは息を呑んだ。どうやら二人セットでこの部室に用があるらしい。学事の人だろうか。

「あの、私、レベッカの高校時代の友人のペトラと申します。レベッカの行方が分からないって親から聞いて……何か知りませんか?」

ペトラは声を潜めてアルミンに聞いた。レベッカの名前にアルミンは口角を下げた。ペトラの後ろのリヴァイを見る。どうやら警戒されているらしい。ペトラと並んでアルミンの前に立ったリヴァイは名刺入れから自分の名刺を取り出した。スミス探偵事務所は有名である。アルミンも耳にしたことがある。だが、信用して良いのだろうか。

「アルミン、とりあえず入ってもらったら?そこじゃ目立つ」
「そうだね。散らかっていますけど入ってください」

ミカサがエレンとジャンにレベッカの件でと耳打ちする。二人はすぐにコントローラーから手を離して部屋の真ん中よりやや扉側にあるテーブルに椅子を運んで座った。二十四メートル四方の部屋は六人入っても十分な広さを保っている。

「レベッカの高校生時代の友人のペトラさんだって。で、こちらが興信所の…リヴァイさん」
「レベッカさんの母親と友人から捜索依頼を頼まれて協力することになった。彼女が行きそうなところを教えてほしい」
「……行きそうなところと言われても。レベッカは確かに同じサークルでしたけど、まだ本人が自分から行方不明になったのかなにかの事件に巻き込まれたのか僕たちは知らないのでそう簡単には言えません。あなたが本当にちゃんとした興信所の人なのか、レベッカのお母さんに頼まれた人なのか分からない限り協力はできないと思います」

アルミンははっきりとした声でそう言った。そりゃそうだろうとリヴァイは思う。レベッカが事件に巻き込まれた可能性もあるのだ。リヴァイ達が加害者側の人間の可能性もゼロではない。ペトラは少し困った顔をした。だが、アルミンは譲らないだろう。リヴァイはアルミンにスマーホフォンを差し出した。

「レベッカの母親に電話して確かめてくれ。俺の名前を出してもいい」

アルミンは黒いスマートフォンを受けとった。銀色のハードカバーが装着されているスマートフォンは外の冷気のせいか冷たい。受けとったアルミンは、電話番号を自らのスマートフォンに打ち込み電話をかけた。五コール目で電話が繋がる。

「もしもし……レイチェル・ハルケです」
「もしもし?私、マリア大学のアルミン・アルレルトともうします。レベッカさんと同じサークルの者なのですが、今部室にスミス探偵事務所の方が来ていて……念のために確認してもよろしいでしょうか?」
「あ、こんにちは。はい、確かに依頼いたしました。ご迷惑をかけてごめんなさいね。でも、よかったら協力していただけないかしら……」
「ええ。もちろんです。お忙しいなかお時間を取らせていただいて申し訳ございません。それでは……」

アルミンは電話を切って、エレン達に向かって頷いてみせた。一応信用しても良さそうだ。改めてリヴァイは手帳を出した。

「レベッカが何かトラブルを抱えていたか知らないか?」
「トラブル…特に聞いていませんね。異性関係でもめたってことも聞かないし…」
「サークル内では一切ないな…そんなことがあったらすぐバレる」
「悩んでいる様子は特になかった気がするけど。俺たちそこまでレベッカと親しいわけじゃないしな」
「レベッカと仲が良かったのは誰だ?できればプライベートでも仲のいいやつが知りたい」
「名前かな?」
「俺たちの学年のもう一人のマネージャーの名前・名字がレベッカと仲が良かったはずです。学部も一緒で講義も常に一緒に受けていますし……」

エレンがそう答える。エレン達はレベッカと同じ学年だったからそこそこに仲良くしていたが、レベッカの性格上そこまで他人を自分の中に入れないせいで、彼女自身について知っている情報は知らなかった。リヴァイはあがった名前を手帳に記入する。

「この子は今日はサークルに来るのか?」
「ええ。来ると思いますよ。名前も…レベッカと同じでマジメですからね。さぼったりなんかしません」
「メッセージ飛ばして呼んでみましょうか?きっとあいつ今メディアでレポートやっていると思いますから」
「頼む」

ジャンが名前にメッセージを飛ばした。すぐに既読の印がつく。部室にレベッカの友人が来て話を聞きたがっていると送ると今からいくと返ってきた。その旨をみんなに告げる。五分もしないうちに着くだろう。レベッカについてもっと詳しく聞くため、リヴァイは質問をする姿勢に戻った。

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