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リヴァイから名前に洗濯機使用禁止命令が出された。会社にいくリヴァイを送り出す名前は此処最近言われつづけている注意にうんざりしていた。信用されていないのだろうか。確かに洗濯機はものすごく気になる。あの時出てきたのは絶対にエレンだ。謎の確信を得ている名前は巨人の腕が消えた後リヴァイの静止を振り切り、すぐに洗濯機のなかを覗きこんだ。それがお気に召さなかったのだろう。彼は洗濯機を買い換えるつもりらしい。

会社の近くにあるコーヒーショップで新作のアレンジラテを購入したリヴァイはデスクでその甘さに顔を顰めていた。名前が好きそうな味だ。彼女はやたら甘いものを好む。角砂糖を舐めていることを知った時には引いた。

「駅前のビュッフェ行きましょうよ」
「この間できたやつ?いいよ。でも混んでそう」
「ダメだったらベーカリッショップ行けばいいですよ。名前さんあそこのパン大好きですよね」
「米粉のパンにハマっちゃってね…もちもちがたまらないの。明日の朝用に買って帰ろうかな」

エレンと名字の会話が耳に入る。リヴァイは今日、弁当を持ってきている。朝の弁当をデスクにおくのが合図のようになっていた。米粉のパンか。リヴァイはそのワードを頭の片隅に留めた。エクセルとワードの面白みのない画面を眺めるだけで午前は終わり、名字とエレンは小走りにフロアを出て行った。

「今日はローストビースのサンドイッチか…最近リヴァイのランチに肉が多いな」
「働き盛りだからな。お前と違ってまだ胃が凭れる歳でもない」
「歳で悪かったな。ヘルシーな生活をしているおかげで体がたるむこともない。いいことじゃないか」
「中年太りだけは避けてくれよ。お前がそんな姿になったら目も当てられない」

リヴァイの辛辣な意見にミケも頷く。営業課は体育会系出身が多いため、比較的締まった肉体をしているものが多かった。そのぶん弛んだ体型の者は目立つ。まさかお前はそうなってくれるなよ、とリヴァイは言っているのだ。

「しかし最近ろくな運動はしてないな…接待のゴルフくらいか」
「ジムにでもいけ」
「ハンジらへんを誘って行ってみるか」

そういえばハンジがいない。どうせ製薬実験にでも夢中になっているのだろう。マスタードの効いたサンドイッチを温くなったハニーラテで飲み下す。やはり甘い。リヴァイの視界にふらふらと歩くケイジが見えた。

「…ハンジはちゃんと家に帰っているのか?」
「さあどうだろう。私もいつもあっているわけじゃないからな」
「あいつが徹夜するのはいいが、部下を巻き込むのはどうかと思うぞ」
「ハンジは上司思いの部下を沢山持っているようでね」

一旦家に返しても戻ってくるのだという。ハンジの着替えをケイジが取りに来た時には驚いた。そしてハンジの有能は部下たちは何を思ったか社長からシャワー室と仮眠室を作る許しをもぎ取ってきたのだ。おかげで研究課の近くには男女のシャワー室と仮眠室がある。

「ザックレー社長がよく許したよな」
「執念に負けたんじゃないか?」
「…そうかもな」

ハンジ達の研究成果は社の発展に直結する。悪い投資ではないと思う。仮眠室に転がる研究者達の姿を思い浮かべてリヴァイは小さく息を吐いた。あいつももういい年なのによくそんな体力があるものだ。

「そうだリヴァイかミケ。今度出張を頼みたい」
「いつだ」
「恐らく三週間後だろう。二泊三日だと思うが平気か?」
「…猫が心配だ」

リヴァイの言葉にエルヴィンは拭き出した。必死で抑えるも笑いが止まらない。真面目な顔で何を言うかと思ったら猫。どれだけ溺愛しているのか。肩を震わせるエルヴィンをリヴァイは睨みつけた。心配なものは心配なのだ。

「お前にはわからないだろうよ、エルヴィン」
「すまないな、リヴァイ…預けられたりはできないのか?」
「……」

気が乗らない様子のリヴァイは対策を考えるとだけ言った。隣に座っていたミケは口ひげに隠れた唇を釣り上げる、同じ愛猫家として気持ちは凄く分かる。ここは友人として助け舟を出すべきだろう。

「エルヴィン。俺が行こう。リヴァイの代わりに部下を連れて行く」
「そうだな。そうしてもらおうか」

リヴァイは意外そうに眉を上げた。リヴァイとミケを指名するぐらいだ。厄介な仕事なのだろうと思っていた。それを部下と自分で引き受けるとは。

「ナナバとゲルガーを連れて行こう」
「その二人なら安心して任せられるな」
「リヴァイ、礼に今度抱かせてくれよ。写真も見せてくれ」
「……ああ」

ミケが言ったのはもちろん猫の事だ。だがリヴァイの脳内では名前のことを言われているように錯覚した。むっと表情を曇らせるリヴァイにエルヴィンは苦笑を浮かべる。

「独占欲が強すぎるのも嫌われるぞ」
「…分かっている」

名前に猫耳でもつけてみるかと邪念をいだいたリヴァイが帰宅した時、名前は駅前で買った宝くじを眺めていた。外にでることを禁じられなくなったため、最近はランニングついでに駅の方まで足を伸ばしているのだ。

「また買ったのか」
「今度はロト宝くじです。7と6を二十枚ずつ買いました」
「当たるといいな」
「はい」

札の代わりにクジが入った財布を名前は戸棚の中に仕舞う。リヴァイは買ってきた米粉のパンを渡し、夕飯の支度にとりかかった。パンの味見をした名前がおいしいと感嘆の声を上げるのを聞いてリヴァイは笑った。

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