05

名前は高校二年からわかれるコースで文系か理系、どちらに進もうかと迷っていた。未だ自分が将来何になりたいのかは決まっていない。マルコは国家公務員になりたいのだという。だから大学も国公立を目指すらしい

「まだ決まらないなら志望を国公立にしておけばいいよ。私立なら文系か理系で別れるけど国公立クラスなら後からどちらにも移れる」
「そうですよね」
「名字は予備校に通わないの?」
「今のところ通う予定はありませんね。指定校推薦狙いですし、家庭教師の先生が週一回来てくださるので勉強は間に合ってます」
「予備校とかの模試ってうけてる?」
「全国模試はまだ…二年から受けようと思います」
「そっか」

マルコはカフェオレを啜る。指定校推薦を狙うのはいいが、万が一に備えて一般受験の準備もしておいた方がいい。名前達の通う高校は上に大学が付属していない。必然的に全員受験か就活をすることになるのだ。

「まあ、なんにせよ予備校がやってる全国模試で自分がどの位のレベルなのか知った方がいいと思うよ」
「2月に学校でやる模試とは別に、ってことですよね」
「そう。受験生のなかでどのくらいなのかってのが重要だからね」

名前は机に突っ伏したくなった。まだ高校生になって1年も経っていないのに今から受験が憂鬱だ。いいや、リヴァイさんに相談しよう。その想いが通じたように名前のスマートフォンがメッセージを受信した。リヴァイからである。

『隣町に行っているらしいが、あまり遅くならないうちに帰れ』
『門限までには帰ります。リヴァイさんお仕事は何時に終わりますか?』
『夕方には片付ける。どこかで夕飯食べるか?』
『駅ビルに新しくできた中華に行きたいです』

にやっと相好を崩した名前にマルコは首を傾げた。名前はなんでもないと言う。チーズケーキと愛玉子を完食した名前はタピオカの入ったミルクティーを啜り、そういえば、とマルコに話しかけた。

「イエーガー先輩とミカサ先輩って付き合っているんですか?」
「え?いや、付き合ってないと思うけど」
「あ、そうなんですか。二人が付き合っているって私のクラスで噂になってて。いつも一緒にいますよね」
「アルミンもミカサも幼稚園からの幼馴染らしいよ。恋人っていうかもう家族だよね」
「ミカサ先輩ってすごくモテるのに全員フってるって聞いてたんで」
「恋愛感情かどうかわからないけど、ミカサは多分エレン以外と付き合う気ないと思うよ」
「イエーガー先輩は?」
「どうなんだろう。今のところあんまり彼女って存在に興味があるようには思えないなあ。陸上命みたいなとこあるし」

付き合っちゃえばいいのに、と名前は思うが、そう簡単なことではないのだろう。エレンにもミカサにも仲良くしてもらっている名前は二人の関係が未だに不明瞭だった。しかし、家族という表現はしっくり来る。母か姉のようにミカサはエレンの世話を焼いているから。

「近すぎて恋愛対象になりづらいんじゃないかってアルミンは言ってたよ」
「近すぎて…」
「物心付く前からずっと一緒だったからね。ほら、恋人を作るときにはその名の通り、恋をするでしょ?でも改めてその対象に恋をするかと言われると難しいよね」
「ふーん」
「まあ、あの二人が付き合ったって聞いても驚かないし、結婚したって聞いても何も思わないかな。ジャンは発狂しそうだけど」
「キルシュタイン先輩ってミカサ先輩のこと好きなんでしたよね」
「よく知ってるね?」
「アルレルト先輩に、どうしてイエーガー先輩と仲悪いのか聞いたら教えてくれました」

マルコは苦笑いを浮かべる。ジャンがミカサに恋したのは入学式の時だ。同じクラスとして整列するミカサに一目惚れしたと言っていた。中学からの付き合いだが、あんなジャンは初めて見た。去年のバレンタインに玉砕していたのを思い出して笑う。

「ミカサ先輩かっこいいですよね。きっと私が男だったら恋しちゃいます」
「逆にミカサが男だったらエレンなんかよりずっとモテると思うよ」
「そうかもしれませんね」

クスクスと笑う。あの用紙で頭脳明晰、運動神経抜群。先日の期末試験では二年首位でミカサの名前があった。ミカサは名前の密かな憧れの人物である。

「マルコ先輩は彼女いないんですか?」
「僕に彼女ができたらジャンが悔しがるからね」
「なんか余裕ですね」

優しいマルコは後輩の面倒見もよく人気がある。きっとバレンタインでは多くのチョコレートを獲得するのだろう。きっとマルコの彼女も優しくていい人に違いないと名前は頷いた。

「そうだ。こんどエレンとも遊びに行ってあげなよ。今日此処に行くって言ったら大騒ぎしてたから」
「イエーガー先輩と?喜んで行きますけど」
「エレン、本当に名字がお気に入りだよね」
「かわいがってもらってるのは確かです。入部してないのにトラック貸してくれたり…」
「実質マネージャーみたいになってるもんね」
「時間があるとき顔を出しているだけですけどね。陸上部の先輩たちみんな優しくて」
「中学で入賞していたんだっけ」
「はい。何回か、ですけど。それにミカサ先輩には全然及びません。こないだ中距離で競争したらあっさり負けました。イエーガー先輩とはいい勝負だったと思うんですけど」
「ミカサは超人離れしているからね……」

現在マルコのスマートフォンにはエレンからのLINE爆撃が来ている。メッセージを受信する振動が止まらない。きっとミカサとジャンもエレンの側にいて煽り立てているのだろう。下心なんてないのに、と言っても全く聞く耳をもってくれない友人にマルコはため息を付きたくなった。

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