02

 
リヴァイから携帯を取り返そうと躍起になっている名前を適当にいなしながら、リヴァイは一階のダイニングで寛いでいた。夕飯の支度をする名前の母親はじゃれあう二人を微笑ましげに見ている。父親は何事かと首を傾げていた。

「ご飯の用意ができましたよ」
「はーい。リヴァイさん返してよー」
「飯の時に弄る気か?ダメに決まってるだろ」

リヴァイは名前にケチャップを渡した。自分のオムライスに波模様を書いた後、名前はリヴァイのオムライスにハートを書く。さも当然かのようにリヴァイはスプーンでオムライスを食べ始めた。

「なんだ名前。リヴァイくんに没収されたのか」
「………」

没収された経緯を話すには彼氏と誤解された先輩と遊びに行くことを話す必要がある。面倒事が増えそうだと名前は口を噤んだ。其れを察したリヴァイは口角を釣り上げる。だが、リヴァイから言うことはなかった。

「そういえばリヴァイくん、仕事の方はどうだい?」
「おかげさまで順調です。最近は忙しくて碌な食事もとれてなかったので有難いです」
「一人暮らしだと料理するのも面倒になるっていうしね。まあ体調にだけは気をつけるんだよ」
「まだまだ若いと思っていたんですけど、徹夜がキツくなってきたのでそろそろ歳かもしれません」
「いや、まだまだ君は若いよ。結婚とか考えてる相手はいないのかね?結婚まではいかなくても料理を作りに来てくれる女性とか」

名前の手がピタリと止まり、顔を上げる。リヴァイに恋人がいるという話は聞いたことがないが、いないという話も聞いたことがない。興味津々といった風に目を輝かせる名前にリヴァイは落胆した。嫉妬の少しでも見せてくれれば可愛いものの。

「いずれご紹介しますよ」
「そうかそうか。リヴァイくんが選んだ女性なら間違いないだろう」

いるいないの回答を避けたリヴァイは含みを持たせるように言う。ビールを飲み出した父親は上機嫌に頷くばかりだった。それとは対称に母親は残念そうな顔をする。

「名前、残念ね。小さな頃はリヴァイくんのお嫁さんになるーって言ってたじゃない」
「え、覚えてないけど」
「あら。でも、まあ、あなたにリヴァイくんは勿体無さすぎるわ」

その言われように名前は頬を膨らませた。リヴァイがいかに凄いかは知ってるが、名前も名前なりに頑張っている。いいもん、とそっぽを向く。

「絶対、リヴァイさんより素敵な人見つけて見せるもん」
「ほう……」
「ご馳走様!」

食べ終わった食器を片付け、名前はリヴァイに手を向ける。リヴァイは渋々スマートフォンを返した。ソファに座り返信する姿を眺めながらオムライスを完食し、同じように片付け、名前の隣に腰を降ろした。テレビを眺めながらちらっと名前のスマートフォンを見る。メッセージが次々と画面に浮かぶのをみてリヴァイは複雑そうな顔をした。友達が多いことはいいことだ。だが、如何せん男の名前が多い気がする。

「行くって言っていたスイーツショップはどこにあるんだ?」
「電車で二十分くらいのところです。今大人気なんですよ。クラスのみんなも美味しいって言ってるし」
「……お前太るからっていって甘いもの自粛してなかったか?」
「テスト前は特別です!脳で糖分使ってるからいいんです」

ホントかよ、とリヴァイは眉を寄せる。そしてふにふにと脇腹を摘んだ。名前はソファーの上で跳ねる。くすぐったいのだ。仕返しとばかりにリヴァイの脇腹を摘もうとしたが、贅肉と呼ばれるものは存在していなかった。

「え」
「なんだ」
「えっ。すごい。お父さんと大違い」

名前はリヴァイのシャツをめくり、その下から現れた筋肉に目を向いた。色白の腹が綺麗に六つに割れている。背中の方もぺろりとめくるとやはりそこには鍛えぬかれた筋肉があった。

「リヴァイさん、あれやってください。力瘤」

リヴァイは上腕二頭筋に力を込めて腕を曲げた。おお、と名前は感嘆を上げて力瘤をつついた。ぐっと力を込めても全く凹まない。捲りあげられた服を戻し、リヴァイは腕の力だけで名前を持ち上げて膝の上に抱えた。猫を抱えるように抱き寄せられた名前は感嘆の息を漏らした。

「おお、すごい……」
「軽いな。ちゃんと食ってるのか?ダイエットとか言って食事とか抜いてないだろうな?」
「ちゃんと食べてますよ」

テレビを眺める名前の旋毛に顎を乗せてリヴァイもニュースを見る。殺人事件のニュースにリヴァイは顔を顰めた。それを感じ取った名前はチャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばした。天気予報にチャンネルを移す。どうやら土曜日は曇りらしい。

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