日課 | ナノ


日課



夜の9時。
それは、俺らにとってすごく大事な時間。

「今から電話するから入ってくるなよ!」
「はいはいもうわかってるわよ」

姉ちゃんとこんなやりとりをして、俺は部屋に篭る。
それから、おもむろにケータイを取り出す。
侑士とはケータイのキャリアが一緒だから、無料で通話ができるのだ。
まだ中学生な俺らには大事なことだったりする。

「あ……、もしもし侑士?」

さっきまで顔を合わせて話してたけど、電話で話すのはまた違う感じがして、かける時は毎回ちょっと緊張する。
電話越しの声もカッコイイな、とか思ってることは侑士には内緒だ。

「おん、俺やでー」
「うん、侑士だ」
「せや岳人、宿題もう終わらせたん?」
「もうバッチリ!」
「そら良かったわー」
「侑士こそ、終わったのかよ?」
「もちのろんやで、バッチリや」
「じゃあ明日写させろよー、多分明日そこ出るから」
「嫌や自分でやりや」
「えー、なんでだよいーじゃんかー」

こんな感じの下らない話ばっかりだけど、楽しい時間はあっという間で、簡単に1時間が過ぎてしまう。
朝練もあるし、長電話しすぎると親に怒られるのもあって、1時間で切る約束になってるのだ。

「あ、そろそろ1時間やね」
「もうそんな時間か、じゃあ……」

電話が毎日楽しみなのは、侑士と話したいのももちろんあるけど、最後に交わすこの言葉があるからだったりする。

「侑士、大好きだぜ、明日もよろしくな!」
「おん、俺も岳人大好きやで、また明日な」
「うんまた明日! おやすみ、侑士」
「おやすみ、岳人」

ケータイの通話ボタンを押して通話を切って、充電器に繋いでから深呼吸を1つ。
我ながら、バカップルだよなぁなんて思いながら、でも嬉しいからやめないんだろうなとも思う。

「うん、今日もいい夢見れそう」

やべ、侑士のラブロマ思考が移ったかな。
まあそれもいっかな、なんて考えながら、明日また侑士に会えるのを楽しみにそっと瞼を下ろした。





130311
忍岳電話話。
全く持って電話越しが生かされてないとか言っちゃいけない
毎日好き好き言い合ってたら可愛いね!