今日の授業はすべて終わり、放課後の部活の時間になったが、跡部はまだ今日は一度もジローを見ていないことに気が付いた。
今日は天気がいいため、またジローは寝てるはずだとあたりを付け、探しに行こうと校舎裏に顔を出すと、珍しくジローは起きたままそこにいた。
「おいジロー、もう部活が始まる」
「あ、跡部! 来てくれたんだ? うれC〜!」
ここにいれば跡部に会えると思って、と笑うジローは眩しくて、跡部は眼を細めた。
「なんだよ、俺に用でもあったのか?」
「そういうわけじゃないんだけど、すげぇ跡部に会いたくなって!」
「部活に来れば会えるだろうが」
理由なく会いたいと思ってもらえた事に喜びを感じつつ、あくまでもそれを悟らせないように返事を返す。
「んー、それじゃあダメなんだよね、ここで会いたかったの!」
だって、と一息いれてから、ジローは話しはじめた。
「ここにいるとね、跡部がいっぱいいるんだ! 何て言うか、上手く話せないけど、陽射しも、風も、全部跡部なんだ」
そう言って目一杯空気を吸い込むジローに、跡部は焦りに似たものを感じて、ジローを力一杯抱き寄せた。
「わわっ、なに? 跡部っ」
「ジロー……お前は、俺だけを見てろ。目に見えないもんなんか追いかけてんじゃねぇ」
「全部、跡部なのに……?」
「ああ、それでもだ」
不思議そうな声を出すジローに、力強く否定すれば、それっきりしばらく二人とも口を開かなかった。
しばらくして、姿が見えなかったから心配したのだろう樺地が来たので、部室に向かうその道程で、やっと跡部が口を開いた。
「"跡部景吾"は……一人で充分だ」
「……うん」
跡部の言葉に、ジローは満足そうに微笑んでみせた。
その笑顔を見て、跡部もまた自信たっぷりに微笑んでいた。
111125
フォロワーさんとの会話で出来たお話
相変わらず予定通りいかない
結局跡部は一喜一憂してない気がするごめんなさい!