俺の恋人は相変わらず忙しそうだ。
家に遊びに来ている今だってそう。
ベッドの上に綺麗に置いてあったクッションを抱き抱えながら視線をやった先には、机に向かってペンを走らす俺のコイビト。
ただ書いているだけでさえ様になるその姿になんだか無性に腹が立って、抱えていたクッションを投げつけた。
「っ……おい岳人、クッションは投げるためにあるんじゃねぇ」
「んなことわかってるよ跡部のばーか」
あーあ、俺ってカワイクない。
やっとこっちを見てくれて、すごく嬉しいのに口から出るのは憎まれ口だけ。
跡部が忙しいのはわかってて、それでも行きたいって我が儘言ったのは俺だしこうなるってわかってたけど、やっぱりサビシイのかも。
「ったく、素直に言えばいーだろ?」
「え?」
「全部顔に出てんだよ、ばーか」
「え、」
俺って単純なのかも。
ていうかわかりやすいのかな。
でもこんなわかりやすく顔に出るのも寂しくてどうしたいのかわかんなくなるのも全部全部跡部のせいだ。
跡部が俺を構わないから。
「……跡部のばーか」
「そうかもな……ったく、今日はもう机に向かうのは終いだ。全然進まねぇからな」
「跡部……!」
跡部も素直じゃないなって思ったけど、嬉しいからなんでもいいや!
うん、やっぱり俺って単純なのかも。
さっきまでの寂しさとか、そういうの全部吹き飛んだ。
「おい岳人、俺の手を止めた責任はとれよ?」
そう言って跡部はにやりって笑った。
どっちかって言うと俺が寂しかった分責任とかは跡部がとるべきじゃないかとか思ったけど、せっかく跡部の気がこっちに向いてるんだから俺が責任とってやる。
俺は、小さく笑うと跡部に近付いて、首に手を回して、珍しく見下ろしている跡部の顔に俺の顔を近付けて、
ちゅっ
「これでいーだろ?」
いつもはされるだけで恥ずかしくてぎゃーぎゃー喚いてる俺だけど、なぜか全然恥ずかしさなんてのはなくて、跡部の驚いてる顔なんて珍しいものもじっくり見れた。
「……やるじゃねーの、岳人。覚悟は出来てんだろうな?」
あんなこと言ってる跡部にも今日なら勝てる気がした。
気がするだけだろうけど。
「やれるもんならやってみろ!」
言いながら距離をとって、とりあえず身近にあったクッションを投げつけた。
111107
跡岳だと岳人が普段より積極的になる気がします
跡部にしかけられると喚くけど、自分からは普通にやっちゃう、みたいな
何はともあれ岳人可愛い!