センチメンタル | ナノ


センチメンタル



涼しくなり、よく風の吹く屋上に長い間いるのには向かない季節になった。
でも、教室に戻る気はしなくて、昼休みが終わり5時間目の始まりを告げるチャイムを、俺はボンヤリと聞いていた。
1時間目からここにいて、ついさっきまで寝ていたためお昼も食べていない。
ああ、侑士にはちょっと悪いことしたかも。
おそらくメールも電話もきているが、携帯も教室に置いてきているため、確認出来ない。
昼休みに来なかったのは、俺がいないのをいいことに女子に囲まれたのだろう。
別に侑士が誰といてもいいけど、あんまりいい気はしない。
そんなことをうだうだ考えていると、屋上の扉が開く音がした。

「岳人、やっぱりここにおったんやな。教室にいないし連絡もつかへんから探したで」

噂をすれば、というやつだろうか。
扉を開けたのは、今まさに俺の頭のなかにいた侑士だった。

「侑士……お前、授業は?」
「そんなもん、岳人のが大事に決まっとるやろ。……それに、原因は俺なんやろ?」
「……別に、侑士が悪いわけじゃないだろ」

やっぱり侑士にはすべてお見通しだったみたいだ。
今日の朝練が終わったあと、侑士と教室に戻ろうとしたら、女子が待ち伏せしてた。
その子は案の定侑士に告白して。
侑士は優しいから断るのもやんわりと優しく断ってた。
侑士が言うにはあとあと面倒だかららしいけど。
そんでそしたらいきなりその女子が侑士に抱き着いたんだ。
侑士はすぐに剥がしてたけど、それからずっともやもやしてて授業なんて出れなかった。
侑士を疑ってるとかそんなんじゃないけど、うまく言葉に表せられない何かがずっとお腹に渦巻いている感じ。

「せやけど、やっぱり俺やん。……安心し、俺が好きなんも愛してるんも、抱きしめたい思うんも岳人だけやで」
「……し、ってる」

俺、やっぱり不安だったのかも。
侑士が言葉をくれて、抱きしめてくれただけで涙が溢れて止まらない。
こんな時くらい素直になれればいいのに、相変わらず口から出るのは素直じゃないけど。
でも、侑士が本気で言ってるのも知ってるから、たまには素直になるのもいいかな、なんて思ってしまう。

「俺も……好きも愛してるも、抱きしめてほしいって思うのも……全部、侑士だけだからな」
「ああ、知っとるで」

絶対に顔は合わせてやらないって思ってたら、侑士が俺の顎に手をかけてくいって上向かせた。
俺も、今すごくしたいって思ったから目を閉じたら、侑士から優しいキスが降ってきた。
今、俺、すごいシアワセ。





111022
少し長くなってしまったかも?
悩む岳人!みたいなのが書きたかった筈なのですが
いつの間にか方向性を見失った気がしてならないです