ゆびきり | ナノ

びきり



「ねえ、あんたはどこにも行かないよね?」

崖上での特訓から戻ってきて数日たったある日、唐突にリョーマが呟いた。
それは問い掛けているようで、独り言にも聞こえた。
リョーマにしては珍しい弱気な発言は、自分の知らない間に慕っている部長がいなくなっていた事によるものだろう。
そのことに真田は少しだけ嫉妬心が芽生えたが、今はそれよりもリョーマの様子が気にかかる。

「俺は、どこにも行かん。お前が一番よくわかっているだろう?」
「…ホントに?」
「ああ、約束しよう」

その言葉に少しだけほっとした表情を見せたが、やはりまだ不安の方が多く出ている。
どうにかして不安を取り除きたい真田は、必死に考えた末にあることを思いついた。

「約束の証に、指切りをしないか?」
「…ゆびきり?」
「ああ」
「はは、おじさんはホントに小指切っちゃいそうだよね」
「む、流石にそこまではせん!」

まだぎこちなくはあったが、リョーマは笑顔を見せた。
そのことに深い安堵を感じた真田は、普段なら訂正させるおじさん呼びも、今回だけはスルーすることにして、小指を合わせた。

「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーら…何してもらおうかな」
「約束を破ることなどないのだから何でもいいだろう」
「…それもそっか、じゃあ幸村さんの罰ゲームうーける!ゆーびきった!」
「それは…怖いな」

楽しそうに罰を考えるその笑顔から、言葉から、合わせた小指から。
そのすべてからリョーマの熱が伝わった気がして、なんとも言えない気持ちが真田を支配した。
この熱がリョーマにも伝わっていればいいと、リョーマを見ればなんとも幸せそうな顔をしていた。

「たまには、ゆびきりもいいかもね」
「ああ、…そうだな」

真田は気付いていなかった。自分もまた、リョーマに負けず劣らず幸せそうな顔をしていることに。

110918
真リョ難しかった…!
とりあえず、U-17合宿です
七斗様、こんなんでよろしいですか…!


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