映してほしい | ナノ

してほしい



初めて会ったときは、生意気なやつって印象しかなかった。
生意気だけど、真っ直ぐなやつ。
周りにはそんなタイプはいなかったから、新鮮だった。
だから、惹かれたんだと思う。
でも、自分の気持ちに気付いた時には失恋が確定していた。
あいつは、忍足しか見ていないから。

「あれ、菊丸じゃん!」
「え、あ、向日!?」

しまった、フラフラ歩いてるうちに氷帝の方に来ていたらしい。
噂をすればとはまさにこのことだとは思ったが、何もこんなタイミングで現れなくても、と思ってしまう。

「あ、なあこの後ヒマだったらさ、そこの駅前に新しく出来たカフェでも行かね?」
「い、行きたい!」

顔が引き攣らないか、ちゃんと笑えるのか、自信は無かった。
それでも、又とない申し出に条件反射気味に食いついてしまう辺り、好きにゃんだからしょうがないと思う。


そんなわけで駅前のカフェに来たのはいいのだが、

「そんでそん時侑士がさー、」

さっきからずっとこの調子で、

「だから侑士に言ってやったんだけどさ!」

向日の口から出るのは"侑士"という言葉ばかり。

「な?菊丸だってそう思うだろ?」
「んー、そうかにゃ?」
「なんだよ、菊丸も違うって言うのか?侑士もさ、俺が何回言っても絶対違うって言うんだよな!」

やっと呼ばれたと思えば、すぐにまた"侑士"に戻る。
だからだろうか、こんな事は言うつもりなかったのに、口からするすると勝手にこぼれ落ちてしまった。

「ねぇ、向日はさ、忍足が好きなの?」
「え?は!?好きって…何言って、」
「でも向日ってばさっきから忍足の話しかしてないよん?ホントは好きにゃんじゃにゃいの〜?」

うりうり、と言ってやれば、向日は案の定顔を真っ赤に染めた。
多分、これで自覚させてしまった。
話を聞く限りでは忍足も向日の事は満更でもなさそうだ。
あとひとつ、何かきっかけさえあれば二人は上手くいくのだろう。
少しだけ、ほんの少しだけ、上手くいかなければ俺にも目を向けてくれるだろうか、という淡い期待がないとは言い切れないが、でも、多分これで良かったのだと思う。
俺はまだ向日を好きでいるだろうし、向日との縁が切れることもないだろう。
だから、これでいい。
向日の目が俺を映すことはないけど、向日が幸せならそれでもいい、なんて。
ちょっとカッコつけすぎかにゃ?


110909
他校片思い企画あのこに恋。様に提出しました!
英二は初めて書きましたね!
アクロバコンビが可愛くて好きです

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