俺、向日岳人は仁王雅治とその、付き合ってる、んだけど。
中学を卒業して、高校生になって、あと半年もしないうちに大学生になる今の今まで付き合ったままっていうのは、正直想像していなかった。
別れたいとか合わないとか思ってたわけじゃないけど、まったくと言っていいほど先のことを想像したことがなかったのだ。
それが、今。
一緒に住む家を探してるだなんて、誰が想像しただろうか。
「んー、こっちはちと狭いのう……」
仁王は中学の時から考えていたらしい。
高校の間バイトも掛け持ちして費用を貯めてたんだそうだ。
「お、ここなんかいいかもしれん」
言ってくれたら俺も貯められたのに、そう言ったら内緒にして驚かせたかったと言われた。
「どう思う、岳」
確かに驚いた、けど。
何て言うか、現実味がまったくない。今ここに二人でいるのもイリュージョンか何かみたいだ。
「岳人?」
「うわっ、な、なに? 雅治」
いつのまにか考え事に集中していたらしい。
肩を揺さぶられて仁王を見上げると、一瞬だけすごく悲しい顔をした。
「岳は、ホントは嫌だったんか?」
「……え?」
「一緒に住みたいって言った日からずっと、心此処に在らずって顔しとる」
「そんなこと、」
「岳人にそんな顔させるために言ったんじゃなか、嫌なら嫌って言っていいんじゃよ」
そう言って仁王は笑った、でもすごく悲しい笑顔だった。
違う、そうじゃない、そんな顔見たくない。
……気が付いたら、目が勝手に涙を流していた。
「……う、……ひっく、」
「な、泣くほど嫌じゃったんか…気付いてやれなくてすまん」
「ちが、……違う……! そうじゃ、なくて……俺、言われて、うれし、くて!」
自分で言って、初めて気付いた。
そっか、俺、……嬉しかったんだ。
「うれし、から……でも、嘘みた、いで……自分でもよく、わからなくて……っ」
どうにかして気持ちを伝えようと必死な俺を、仁王が抱きしめた。
「ま、さはる……」
「ちゃんと岳の気持ちは伝わったぜよ。ありがとう、岳人」
「お礼は、こっちの台詞だっ……お前が、こんなに真剣に考えてくれてたのに、俺、ごめん、ありがとう……!」
ちゃんと顔を見て言いたかったから、仁王から体を話した。
ぼやけた視界で見た仁王は、初めて見たんじゃないかってくらい満面の笑みを浮かべていた。
その笑顔はまるで俺達の未来を象徴するかのように輝いていた、なんてちょっとクサイかな?
110901
というわけで、初仁岳初未来話でした。
引っ越したらとりあえず新婚いちゃらぶすればいいと思います。
こんな嫁さんいるなら仁王も真面目に働きそう←