勝てない。 | ナノ


勝てない。



「跡部」
「ね、跡部ってば」
「あーん? ……ああ、滝か。どうした、会計報告に不備でもあったか?」

何回か呼んでも気づいてくれなくて、しょうがないから肩を叩いたら跡部はやっと返事はしてくれたけど、視線は書類から外してくれない。

「不備はなかったよ」
「そうか、ならどうした? 部活で問題でも起きたか?」
「それも大丈夫」

跡部が忙しいのは知ってる、だから邪魔するつもりなんてないんだけど。
……ここまで仕事ばっかりだとちょっと妬けるよね。

「なら、」
「ねえ跡部、なにか用がないと来ちゃいけない?」
「……いや、んなことはねぇよ」

あ、やっとこっち向いた。
でも、あれ?今、ニヤって笑ったような…

「それにしても、お前でも寂しいなんて思うんだな? 萩之介」
「べ……つに! てか、いま、なまえ……!」
「ああ、まともに呼んだのは一週間ぶりくらいか? それにしてもこんなに焦るお前が見れるなんてな、たまにはこういうのも悪くねぇ」

まったく、名前くらいでこんな、らしくない……!

「……いじわる」
「はっ、その意地悪に惚れたのはお前だろ?」
「……もう、跡部には勝てない」
「当たり前だろ、あーん? ああそうだ、今日は予定ねぇだろうな?」
「え? うん、ないけど……」

もしかして、なんてちょっと期待してると跡部は仕事が終わったらしく、机を片付けてこっちに歩いてきた。
そして耳元で、

「一週間分、たっぷり可愛がってやるから覚悟しろよ? 萩之介」

そう言って軽くキスをされた。
……まったく、跡部には一生勝てる気がしない。
咄嗟に俯いた顔が真っ赤だなんて、跡部はお見通しなんだろうから。

滝は気付いていなかった。
キスをした直後、跡部の顔もまた赤かったということを。





110802
そして美味しくネチネチいただかれます←
頂かれてる場面の妄想は出来るけど、文章に出来ないので妄想補完お願いします
跡滝は、一緒にいなくても全然大丈夫だけどやっぱり寂しい滝さんと、全部わかっててけど決して迎えに行かずあくまでも前に進み続ける跡部、な関係が好きです。