トリック・オア・トリート? | ナノ


トリック・オア・トリート?




「がーくとっ♪」
「うっ…なんだよ侑士!」

侑士がなぜかちょーご機嫌で抱きついてきた。
こーゆー時の侑士は危険だ。

「今日、何の日やっけなぁ?」
「……へ?今日?」

岳人は、何か忘れてるのかと不安になってきた。

「この調子やと持ってなさそうやな。ま、そのほうが都合いいんやけどな………」
「だからっなんだよ!…くそくそ!」

岳人は、侑士のこの顔と低い声が苦手だ。

「…がくと、トリック・オア・トリート!」
「……はぁ!?」

体を硬くして身構えてた岳人は一気に力が抜けた。
でも、これでさっきまでの言葉にも説明がつく。

『持ってなさそうやな』 …お菓子だ。
『都合いいんやけど』 …はっ身の危険が!

「ゆ…侑士…?その、俺…今、お菓子なんて持ってねーけど…」

言いながら、岳人は侑士の腕の中から抜け出そうと試みる。

「岳人、なんで逃げるんや?ま、でもしゃーないな、お菓子持ってないんやったらいたずらしかないやんなぁ」

侑士はかなり嬉しそうにしている。

「あ、侑士、俺っお菓子取ってくるから!」
「逃げられる、思ってるん?」
「・・・ぁ・・・っ侑士っ」

耳元で 低い声で、でも優しく侑士は言う。

バンッ

その時、すごい音で部室の扉が開いた。

「あ…日吉…」

そこにはすごい顔をした日吉が立っていた。

「忍足先輩…。何、してるんですか」
「日吉…?これは…その…」
「向日先輩泣かしたら容赦しませんって言いましたよね」

後ろにオーラが見える。

「ちょ、岳人泣いてないやん!」
「泣くも啼くも同じです」
「日吉っ何言ってんだよっ!侑士もいつまでくっついてんだよ!離れろ!」

日吉に言われたことで動揺していた侑士は岳人に突き飛ばされただけで簡単に離れた。

「あ、そーだ日吉!お前お菓子持ってねーか?」
「え?…飴なら一個持ってますけど…」
「それ、くれねーか?」
「いいですよ。」
「サンキュー!!」

そして、侑士の方にくるっと向き直り、

「はい、侑士!」

満面の笑みで渡した。

「が、岳人…いたずら、なんでそんなにイヤなんや?」
「だって俺…侑士にパシられんのやだし!」
「岳人、俺が岳人をパシるわけあらへんやろ?」

日吉は完全に蚊帳の外である。

「じゃあ…何しようとしてたんだよ?」
「そやなぁ…うん、いたずらはいたずらや♪」
「なんだよさっきから!はっきりしろよな!」

その間中ずっと侑士を睨んでいた日吉がどう会話に入ろうかしていた時、いつの間に来たのか滝が肩に手を置いた。

「あ…滝先輩」
「今日は…もう君の入る隙間はないんじゃないかな?また明日にもちこしだね」
「…はい…。(明日こそは下剋上…)」

悔しいがしかたない、と日吉はあきらめて滝と一緒に部室を出て行った。

「…さて、岳人。やっと二人きりやなぁ…」
「な、なんだよ侑士、お菓子あげただろ!?」
「そーなんよ…。やりたいコトいっぱいあったんに…」

岳人は全身の毛が逆立つのを感じた。

「侑士…もう一回聞く。何しようとしてたんだ?」

適度に距離を取りつつ警戒心剥き出しに聞く。

「んータダでは教えへん」
「じゃあどうしたら教えてくれんだよ?」
「俺がしたかったいたずらやってくれるんやったら教えてやらんこともあらへんよ?」
「う…やる!やるから教えろ!このままじゃ寝れねえ!」
「よう言った、岳人!!」

侑士が満面の笑みで岳人の頭をなでる。

「あ……っ侑士!やっぱ今のナシ!絶対やんねぇ!」
「岳人…男に二言はあらへんよ?」
「ぅ……っ分かったよ!やるよ!」

たとえ自分の身が危うくとも気になるものは気になるのだ。

「じゃ、岳人。これに着替えてな?」

そう言って侑士が取り出したのは、ふわふわとかひらひらとかファンシーな擬音が似合いそうな、跡部の家に行くと女の人が着ているあの服だった。

「…お…っまえ…侑士…?そんなもん、どこで手にいれたんだよ…?」

今更になって、本気で自分の身が危ないと思い始める岳人だった。

「岳人ん為や、めっちゃ苦労したんやで?」
「う゛ー…………っ着るよっ!…着るからこっち見んなよっ!?」
「…しゃーない、このさいそれくらいは我慢したる」
「(見るつもりだったのかよ!?)」

自分のために苦労した、と言われればあっさり受け入れてしまうくらいには岳人は侑士が好きだったし、侑士も知っていて言っている。
岳人にもわかってるはずだ。

「あー……侑士?これでいいか…?」
「あ……が、岳人……っっ」
「ど、どーした侑士?…やっぱり、変、だよなぁ…」

岳人を見たとたんに固まった侑士を見て、岳人はすぐに脱ごうとした。
が、我に返った侑士がかろうじてそれを止めた。

「岳人…岳人、可愛すぎやーーっ」
「うわっ侑士っとびつくなだきつくなはなれろっ」
「が〜くとぉ〜可愛えぇ〜vV」

完っ全に自分の世界に入っている侑士である。

「このままお持ち帰りやわぁ〜」
「わ、わっ!やめろって侑士っ!」

そして、次の日の朝練は2人で仲良くサボりだったとか♪





100904
自サイトからの転載です。
二年位前の物なんですが…、長いし話は纏まってないしで、大分酷いですね。
もう少しマシなものが書けるように頑張りますね!

110803 微修正