ゆめ | ナノ
02
ある日の放課後。
私が帰ろうとすると、先生に呼び止められた。

「おー、みょうじ!今帰りやったらちょっとお使い頼まれてくれへん?」
「お使い、ですか?」
「おん、このプリントを千歳の家まで届けてくれへん?近くのマンションやからすぐやで、ほい地図」

ほなよろしく、なんて先生は返事も聞かずに行ってしまった。
確かに、今日は千歳くんは朝からいなくて、先生も探しに行けって言わなかったから、休みなのかなとは思っていた。
それに、今日に限って大事なプリントも配られた。
でも、生徒に任せるのはどうなんだろう…。
大阪ってすごい、なんて思いながら、頼まれたからには行くしかないと、学校を出発した。

「えぇと…地図だと、ここかな…?」

ここまで来たのは良いものの、私なんかが行って迷惑じゃないかなとか、留守だったらどうしようとか、いろいろ考えてしまって、入り口の前でうろうろしている私は怪しい人に見えていると思う。
そんなとき、後ろから声が聞こえた。

「あれ、みょうじさん?」
「ひゃあっ!?…あ、ち、千歳くん?」
「こぎゃんとこで会うなんて珍しかね、どげんしたと?」
「あ、えと、千歳くんに用があって…」
「まあ立ち話もあれやけん、あがってきなっせ」
「え、でも…」
「いいからいいから、」

私は千歳くんに押されるまま 千歳くんのお家にお邪魔することになった。
正直にいうと、ちょっとどころではなくドキドキしているし、緊張で声が震えないか心配でならない。
千歳くんがお茶を入れてくれている間に少し落ち着こうと、周りを見渡してみることにした。
部屋は広すぎず狭すぎず、余計なものは余り置かれていないなんとも千歳くんらしい家だった。

「そんで、みょうじさんはどぎゃんしてそこにいたと?」
「そうだった!はいこれ、先生に頼まれたプリント」
「こんためにわざわざ来てくれたと?」
「う、うん…」
「…ほんなこつ、ありがとう」

あ…千歳くん、こんなふうにも笑うんだ…。
ちょっとはにかんだような、照れ臭そうな、笑み。
私はその笑顔に見とれちゃって、千歳くんに心配されたりもして。
それから暗くなるまで、いろんな話をした。
好きな食べ物の話とか、どんな本を読むのかとか。
初めて知る意外な千歳くんもいて、もっと知りたい、なんて。
この気持ちはなに?

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