愛情故に*
頬を撫でる冷たい手の平の感触に瞼を開ける
その人の顔ははっきり見えない
ただその唇は紅く
綺麗な弧を描いている
眠っていなさい
今は何も見なくていいのよ
優しく囁きかけられ
そのまま瞼を閉じた
今度は息苦しさで目を醒ます
自分の上に覆いかぶさっている物を横に押しやる
べしゃりと音が鳴る
それは柔らかくてほんのりと温かい
見なければ
知らなければよかった
血が広がり
徐々に冷たくなっていく身体
誰がなんの為に
こんなことをしたのか
そんなことよりも
どうしてこの人は笑っているのか
それが不思議でならなかった
[*prev]:[next#]
タイトル一覧