私だけのドレス |
あれからドレスを作っているのが見つかってしまい、作業を進めないために、隙もなく私を呼び出したりしたお姉様達。
別に悪い気はしない。
だって家事も好きだし、何よりドレスがほんの少しでもできあがっていくのが楽しかった。
でも、ひとつだけ残念なことがある。
芥川さんに会う時間がない。
芥川さんに最後に会った日、時間に余裕がなくなると分かった私は、先に言った。明日からは会う時間はないって。
芥川さんは悲しい顔をしたけど、いつもの太陽みたいな笑顔でわかった、と返事をしてくれた。
「もう…少し…!」
最後のお気に入りのリボンを胸のところにつけた。
「できた!」
世界に一つだけの、私が作った私だけのドレス。王子様、喜んでくれるかしら。
王子様の喜ぶ顔を思い浮かべた。なのに、頭の中にでてきたのは芥川さんの喜ぶ顔。
どうしてだろう。
芥川さんは王子様じゃないのに、私の頭のはどうかしてる。
少し風にあたりたくて窓からベランダに出た。
雲がひとつもない、星がはっきりと見える綺麗な夜空だった。