百面相してる






今日はやること全てに集中できなかった。理由は何となく分かる。きっと昨日の羊さん、芥川さんのせいだと思う。
芥川さんのせいなのは理解できたけど、何故芥川さんなんだろうかはまだ分からなかった。だって会ったばかりなのに。



「はぁ…」



ため息をついた。とりあえず今日の仕事は終わった。あそこに彼はまたいるのだろうか。そう思った私は、いつの間にか昨日の川に足が動いていた。

いた。また昼寝してる。昨日みたいに隣に腰かけて寝顔を眺めていた。本当に羊さんだ…。そんなことを考えていたら、腕を誰かに掴まれた。誰かって今ここにいるのはこの人しかいないんだけれど。



「シンデレラちゃん!」

「…こんにちは。芥川さん」

「オレね、ここで待ってたらシンデレラちゃん来てくれるんじゃないかって思って待ってたの!」



満面の笑みで言った芥川さんの表情に少し鼓動が早くなった気がした。私もです、なんて素直に言ったほうがいいのだろうか。でもすごく恥ずかしい。



「シンデレラちゃん。一人で百面相してるけど大丈夫?」

「え!?」

「さっきから考え事してるシンデレラちゃんの顔面白かったよ?むーってなったり、真っ赤っかになったり」

「う〜…!」



いてもたってもいられなくて後ろを向くと、芥川さんは可愛いっていいながら笑っていた。

芥川さんとは会ったばかりなのに、何かいつもとは違う自分が出てくる。私、久しぶりにこんなに楽しく会話してるのかもしれない。

あんなところにずっといたら笑うなんてできなかった。言われた仕事をこなしていくだけで、そんな自分の時間なんかなかったかもしれない。



「あの、芥川さん…」

「ん〜?」

「明日も…会ってもらえないでしょうか…?」



突然口から出た言葉。
芥川さんはすごく驚いていた。昨日会ったばかりの人にこんなこと言われるのなんて迷惑だよね。
それでも、私は会いたいって気持ちでいっぱいだった。



「うん。いいよー!」

「え!?」

「ふふっ。そっちから聞いといてその反応はないでしょ」



OKがもらえるなんて思ってもいなくて。一人で先に落ち込んでいたのが馬鹿みたいだった。

そっか…。明日も会えるんだ。
そう思うと嬉しくて、自然と笑顔になっていた。それを見た芥川さんは、頭をなでてくれた。



「じゃあ約束」

「はい!」





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