シンデレラ






満月の日の夜。
私はずっとそわそわしていた。そんな私を面白がって魔法使いさんまで来ていた。



「もうすぐだな」

「う、うん」

「カチカチしすぎだろぃ!」

「だ…だってぇ〜…!」

「大丈夫だろぃ。お前の王子様はきっとお前を世界一幸せにするに決まってる」



思わずぐっとくる台詞を言うもんだから涙ぐんでしまった。慈郎くんが迎えに来る前に泣かないように我慢してたのに酷い。
涙を頑張って堪えていたら、下から「あきちゃーん!迎えに来たよー!」と言う声が聞こえたので、急いで彼の元へ向かった。



「あきちゃん、心の準備はできた?」

「はい…!」

「じゃあ、行こうか」



――――――



慈郎くんのお城に着くと、召使いさん達が私を綺麗にしてくれた。慈郎くんが選んでくれた真っ白なドレス、髪の毛をアップに縛り、化粧をし、自分とは思わないぐらい可愛く変身していた。きっと舞踏会の時よりも可愛いと思う。
でも靴は、靴だけは用意されていなかった。何人かに聞いてみたけど知らないって答える人ばかりだった。

こんこんっとドアを叩く音に返事をすると、入ってきたのはいつもよりもきらめかな服の慈郎くんだった。



「わぁ…やっぱりオレの思った通りだ。スゲー可愛い…!」

「あ、ありがとう…っ。それよりも慈郎くん。靴はどこにあるの?」

「靴?あぁ、今でもいいかな」



そういうと、慈郎くんはガラスの靴を取り出した。



「これ、覚えてる?」

「うん、私が舞踏会の時に履いた靴だもの。どうして…?」

「あきちゃん急いでたみたいで片方落としたの気づいてなかったんだね。後もう片方は優しい魔法使いさんにもらった」



「足貸して?」と言った慈郎くんに足を差し出す。すっぽりと入るガラスの靴はドレスに負けず、輝いていた。



「準備、できた?」

「はい!」

「じゃあ一緒に行こう」

「はい…!」



慈郎くんは私をリードして会場へと向かった。改めて慈郎くんの手は大きくて、男の人なんだと理解した。

みんなからのお祝いの拍手をいただきながら道を進んでいく。
私たちは顔を見合わせて、微笑みながらキスをした。

今日から私は、世界一幸せになります。
シンデレラに込められた別の意味を理解しながら…。



End

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