それに渡したいものもあるし |
慈郎くんの元へ辿り着くと、彼は目一杯の笑顔で迎えてくれた。
「慈郎…くん…!」
「あきちゃん!」
私は勢いよく慈郎くんに飛びついた。がしっと受け止めてくれた慈郎くんにさっきの報告をした。
「お姉様…私の為に嘘をついていたみたいなの。それに…」
「それに?」
「私、実は嫌われてたの。いつもこき使われていてね?でも…勘違いだったみたい。話してようやく分かった。きっかけをありがとう」
「いいえ!よかったね〜!」
慈郎くんはそういうと、頭をなでながら微笑んだ。なでてくれてるのが気持ちよくて目を閉じていたら、耳元で囁かれた。
「これで俺達邪魔されずに結婚できるね」
「…え!?」
びっくりして思わず目を見開いてしまった。慈郎くんの顔を見ると、悪戯そうな、悪いような…でも嬉しそうな表情だった。
「でも、まだ慈郎くんのお母さんやお父さんとかに」
「それは大丈夫!舞踏会の日に紹介しちゃった!」
慈郎くんの行動力は半端ない気がする。だって、こうなるって分かっていたんだ。
「それに渡したいものもあるし」
「ん?」
「ううん!じゃあ今度の満月の日に迎えに行く。それまで心の準備しててね」
私は大きく頷いた。