ほら、さっさと行きなさい






「お姉様、ごめんなさい!私、やっぱり慈郎くんのこと諦められません」



私は今まで封じてきた気持ちをお姉様に言ってみた。こんなこと言うの初めてだから、どうなるか分からない。今まで以上にこき使われるかも知れないし、追い出されちゃうかもしれない。
それでも伝えたかったんだ。



「…はぁ。言うのが遅い!」

「へ!?」



頭にチョップをくらった。状況が読めなくて少し混乱している。



「あきが引っ込み思案なのは知ってる。だから少し協力してあげたのよ、貴女の恋に。王子様なんて、いつ誰に奪われるか分からないんだから」

「…は、はい」



私の知っているお姉様じゃない…。
あまりにも様子が違いすぎて、お姉様をつい見つめてしまった。



「何か?」

「い、いえ。私の知っているお姉様と違うので…」

「いつもと同じよ。妹はこき使うのは当たり前。どんな時でも使ってやるわ。…でも、妹だもの。困ったら助けるのが姉の仕事よ」



最後の言葉に涙がぶわっと溢れた。今まであんなに嫌っていたのは私だけだったということにも気づいた。なんでもっとお姉様達と近づけなかったのだろう。優しいのは当たり前じゃない。だって…お父さんが選んだ人達だもん。



「ほら、さっさと行きなさい」

「え?」

「外に王子様でも待ってるんじゃないの?」

「はい…!」



私は外で待ってくれている慈郎くんの元へ走っていった。




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