全部だろぃ |
お姉様と慈郎くんが結婚するのではないか、舞踏会で踊っていたのは実はお姉様だったんじゃないか、とかたくさん噂が飛び交っている。
私は用事以外外には出ないようにしていた。だっていつ会ってしまうのか分からないんだもの。
はぁ…、と星空を眺めながらため息をつくと、私の隣がキラキラ光った。光の中からあの時の魔法使いさんが現れた。何故現れたのか不思議に思っていると、杖でコツンと頭を突っつかれた。
「急に何ですか?」
「バカだなぁって思っただけだ」
「…うるさい」
「本当は奪われたくなかったんだろぃ?自分の気持ちを抑え込んで、相手の事を考えるのは悪くねぇけど、時と場合によるぜぃ」
「…関係ないです」
「あの時オレがいなかったら舞踏会に行けなかったのに、よくもまぁ、そんな口聞けるもんだな」
痛いとこ突いてきた。確かに魔法使いさんがいなければ、あの時舞踏会に行けなかったし、慈郎くんが王子様だってことも知れなかった。
この人がいなければ、物語は発展しなかったのだ。
「今更慈郎くんに会ったところで何もできない」
「それはお前が決めることじゃねぇ」
「え?」
「今確かめればいいじゃん」
「何を?」
「全部だろぃ!」
そういうと、魔法使いさんは杖を振った。光が私を身にまとい、視界が真っ白になる前に彼は行った。
「お前は幸せになる権利がきちんとある」