オレが噂の王子様、だよ?






間に合った…。
目の前には大きな大きなお城の扉。ようこそ、と案内された場所は大きなダンスホール。

みんながざわざわとしてる。
周りを見ようと顔をあげようとすると、私ではない人の影が視界に入った。誰だろう、と思いながら見上げると、そこには見知った人がいた。



「あ、芥川…さん!?」

「うん!こんばんは〜」

「こ、こんばんは…」



心の準備ができてないから、すごく恥ずかしい。確かにドレス姿を芥川さんに見せたいなぁとは思っていたけど…。



「…芥川さんは、どうしてここに?」

「変なこと聞くね〜。オレが噂の王子様、だよ?」

「へっ!?」



芥川さんが王子様だったなんて。…今まで会った中で失礼なことしてないかな?あー…考えたら頭がごちゃごちゃしてきた。



「ま、そんなことはいいんだ!ねぇ、シンデレラ。オレと踊りませんか?」



そういった芥川さんは、私の手を求めるように、手を差し出した。
断れる…はずない。
だって、憧れの王子様が芥川さんだったなんて、夢なのかな。

私は満面の笑みで、手を重ねた。



――――――



一曲踊り終えると、何故か大きな拍手が。
わけが分からなくてあたふたしていると、芥川さんはぎゅっと抱きついてきた。それと同時に悲鳴とざわつきまで聞こえた。



「シンデレラ…本当の名前はなぁに?」

「え?」

「オレ知ってるよ。オメェが"シンデレラ"って名前じゃないことぐらい」

「どうして…?」

「だーいすきな人の事ならなんでも知りたいのは当たり前、でしょ?」

「っ!」



告白された…?
いや、芥川さんのことだから、この好きは恋愛対象じゃないよね。だって誰にでも言いそうだもの。"好き"って言う言葉。

頭ではそう考えてるけど、心は正直で、照れて顔が真っ赤になってしまった。静まれ私の心臓…!



「ね、教えて?」

「……あき、です」

「あきちゃん、ね。ありがとう!」



そういった芥川さんは満面の笑みを浮かべて体を離した。

深呼吸して落ち着いたた私は、時計を見た。
現在の時刻は11時50分。

後10分なことに正直驚いた。早く家に帰らないと…!



「芥川さん!ご、ごめんなさい!失礼します!」



そう言ってから急いで家に戻ろうとした。慣れない靴を履いたせいか、片方脱げてしまったが、そんなことに気を回している場合ではなかった。




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