外出許可をもらってきた。帰る家はもちろん覚えてないけど、氷帝学園までの道のりなら聞きながらでも行けるはず。そう思った私は、鞄を持って病院を出た。



「着いた…」



思ったよりもすぐに着いた氷帝学園。すごく大きいから、校内で迷いそうな気がした。とりあえず校舎内でも見ようと思った私は、昇降口へと向かった。意外に体が覚えてるみたいで、すんなりとたどり着いた。

靴を履き替える時に声をかけられたりもした。「ごめんなさい、何も覚えてないんです」って言葉を何回も言わなくちゃならなかった。相手にはとても申し訳ないと思った。

一通り校舎を見ても何も思い出さなかった。色んな教室に入ったり、自分の席に座ったりもした。感じるのは初めての風景ってことばかり。初めてじゃないのにね。

どんどん階段を上っていくと、もう屋上なのか扉があった。ガチャっとドアノブを回せば開いたドア。ブワーって風が私に吹いた。



「あ…」



柵の近くまで歩いていって見えたのがグラウンド。たくさんの部活の人たちが走っていた。そういえば、慈郎くんはテニス部だったんだよね。隣にあるテニスコートに目をやれば、テニス部が練習をしていた。でもその中には慈郎くんはいなくて。

歩き疲れた私は、少し休憩しようと座った。誰もいない屋上って静かすぎて何かありそう。そう思った私は周りを見渡した。チラッと見えた人影。失礼だけど、気になってしまったものは仕方ないから見に行った。
そこにいたのは見覚えのある人で。すーすー寝息をたてて寝ていた。私の手は、自然にふわふわした頭を撫でていた。



「っ!!」



急に何かに殴られたような痛みが頭にきた。

屋上、慈郎くん、たくさんの女子達。
何か喋ってる。
慈郎くんが私に近づこうとしてる。それを防ぐようにたくさんの女子達が私を取り囲んでいた。
来ないで…来ないで来ないで!これ以上来たら私が…!!

…慈郎くん、私全部思い出しちゃった。
いつの間にか目から涙が流れていた。




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