少し固いベッド。薬の臭いがする。周りは静か。あぁ、ここは保健室か病院なのかな?って思いながら目を開けた。

私が目を開けると周りが騒ぎ始めた。誰だろうと確認しようと思って顔を見たけど、全然知らない人。もしかして、わざわざ付き添ってくれた優しい人なのかも。そう思った私は、名前を聞こうと訪ねてみた。



「あの…」

「心配かけんなし!オレもう心臓壊れそうで大変だったんだから」

「すみません、わざわざ知らない人の見舞いに来てくれて。お名前、聞いてもよろしいですか?」

「え、」



目の前にいる金髪のふわふわしている髪型の男の子が目を見開いていた。私、変なこと言ったかな?

どうすればいいか分からない男の子が口を開いて、変な質問をしてきた。



「ねぇ、君の名前は?」

「私?えっと…」



あれ?どうして自分の名前が出てこないんだろう。簡単な質問だったじゃないか。自分の名前だよ?えっと…名前名前、なまえなまえなまえなまえ…。

思いだそうとしたら頭がズキズキ痛くなった。



「〜っ!」

「弥子!?弥子!!…ごめん」

「どうして、私、自分の名前思い出せないんですか?ねぇ、私って」



それ以上言ってほしくないのか、目の前の男の子の手で口を塞がれた。男の子は今にも泣きそうな顔をしていた。



「ごめん…ごめんね…っ!!」



泣きそうな男の子は、ついに泣き始めてしまった。そして「ごめんね」の謝罪の言葉ばかり。

私は男の子の名前を知りたくて、「教えてください」と問いかけた。
すると男の子は、さっきまで泣いていたのが嘘みたいに、太陽みたいな笑顔で答えてくれた。



「はじめまして、オレの名前は芥川慈郎!よろしくな!!」





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