胸の中の黒いかたまり
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「なー、な聞いてる!?」
「な。安田と話すのが嫌って言えば楽になるよ?」
「…」
いつの間にか、本好くんに告白されたことを知っていた安田。いや、別にいいと思うけど、そのせいで二人とも静止していた気持ちものが一気に動き出したというか。
人の目も気にしないで積極的にアピールしすぎだよ…。
まだ安田と本好くんの告白に答えが出たわけじゃない。今だって上手くしゃべれない。というか、しゃべられない。下手に何かしゃべったら、また変に関係が動いちゃう気がして怖いんだ。でもそうなると二人に心配されるから、相づちぐらいはしている、はず。
「最近美っちゃん部活頑張ってるよね。転々としてるけど」
「うん」
「でもアレだよな!どこの部活にいたって、絶対1回は藤がいるんだぜ?可哀想だよな」
「うん」
「え。何言ってるのな。美っちゃんを馬鹿にしてるような話うなずくなんて、聞いてなかったでしょ」
「うん」
私がずっとうなずいてばかりだと気づいた二人は、途端に静かになった。そして、安田にどんっと背中を叩かれた。何で!?
「俺の告白を受けて、真剣に考えてくれるのは嬉しいぜ?でも、なはいつものなでいろよ」
「そんななは俺も見たくないな。だって、俺が好きになったなはそんなんじゃないよ」
「安田…本好くん…」
何だか今まで考えてた自分がバカらしくなってきた。こういう問題はきっと、頭で考えるよりも、気持ちに任せるのが一番いいよね。
だから、まだ。私は私のままでいて平気なんだよね。
「ありがとう!何だかもうスッキリした!」
「おう!」
「うん」
「あとね、私を好きになってくれてありがとう!」
そういったとき、安田は真っ赤に、本好くんは微笑んでいた。
今はまだ、幼なじみでいてくださいね。