空と私は同じ
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ざぁー…と音が聞こえてきた。もしかして、と思って窓から外を見たら雨が降っていた。
折りたたみ傘確か持っていたはず。確認するためにかばんを開けて探してみたけど、どこにも傘らしきものはなかった。…そういえばこの前折りたたみ傘使って、しまい忘れたんだ。
はぁ、とため息をついた私の近くに安田が来た。チラッと見てきたから、思わず目をそらした。
キスされてからお互い気まずくなっていた。私が話しかけることも減ったし、安田も話しかけてこなった。少し胸の辺りがぽっかり穴があいた感じがした。
もう一回ため息をつけば、安田が気まずそうに話しかけてきた。
「あー…もしかして、な傘持ってねぇの?」
「安田が言ってる通り傘忘れましたよー」
「…そっか」
会話終了。話しかけてくれたから、久しぶりに一緒に帰ろう、なんて言ってくれるかと期待してしまった。あり得ないあり得ない。
傘ないけど、雨に濡れても家近いから平気だよね。そう思って、立ち上がって帰る準備をしていたら、安田が驚いた顔をしていた。
「おまっ!この雨の中傘ささないで帰るのか!?」
「そうだけど…だめ?」
「当たり前だ!!俺が送ってやるから帰るぞ!」
「う、うん…」
半ば無理矢理に安田と帰ることになった。無理矢理なのに、私の頬が少し緩んだ気がした。
昇降口で靴に履き替えて、安田が傘を開いた。持っていた傘は折りたたみ傘で、小さかった。二人も入るのかな。安田が開いてくれた傘の中に入って、歩き出した。
濡れないように入ってるから、お互いの距離は思っていたより近い。会話も全くしない、雨の音だけが耳に入っていた。
「ねぇ、安田…」
「…なんだ?」
昨日ハデス先生に言われたことを話した。別に話したって何か変わることでもない。でも、きっとこれは安田に話しておきたかった。
「ハデス先生に言われてから、何にも考えないで話そうと思ったの。昨日は授業終わりに本好くんが話しかけてくれてね、普通に話せてた、友達みたいに」
「…」
「でもね、さっき安田と話したとき、本好くんとは違う何かがあったの。話さなかったときは、何だか寂しくなった。ねぇ、これってどうしてなのかな?」
安田に問いかけると、そっか、と返事をしただけ。これ以上頭で考えたくない私は、それだけ?と安田にまた問いかけた。本当の答えを言ってほしい。こんな気持ちを込めて。
「俺の口から言っていいのか分からないけど、なが聞きたいなら言う」
「いいよ」
「な。きっとその感情は『好き』っていう感情だと思う、って俺は考えてるんだけど。違うか?」
あ…これが『好き』なんだ。安田と話せて嬉しいのも、一緒に帰れて知らずに嬉しくなっていたのも、安田が好きなんだからなんだ。初めて知った気持ち、今まで苦しませていたものがなくなった瞬間、雨が止んでいった。
「そっか…私、安田が好きなのかー…」
私が微笑みながら言うと、傘をしまおうとしていた安田が顔を赤くしていた。
「好きになってくれてありがとう。安田、大好き」