逃げ道はどこにもない
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「で、また俺に相談?」
「うん」
本好くんの家にお邪魔している私は、昨日あったことを話してしまった。だって、他に相談できる相手がいないんだもん。美っちゃんがいるけど話すのは恥ずかしい。
「…本好くんも安田と同じ考えなの?」
「そんなことないよ」
「どうして…?」
「だってなに無理させたら俺が嫌なんだ。あと、なは俺のところに来てくれるって信じてるから」
どうしてそこまで自信満々に言えるのだろうか。少し照れながら曖昧な返事をした。
やっぱり様子が変だったのは安田だけだったんだ。本好くんはどこも変じゃなかったし、いつも通りに相談に乗ってくれた。
「でもさ、俺も安田みたいになったらなはどうする?」
「え…?」
「本当は、なを自分のものにしたくてたまらないって言ったら…どうする?」
耳元で囁く本好くん。心臓がばくばくいってる。だって本好くんは本好くんだよね?そんなこと言う本好くん知らない。
「ねぇ、な」と、また囁いた。こんなことになったのも全部私のせいなんだ。私がはっきりしないからだ。
「な?」
いつの間にか目から涙が流れていた。また泣いてしまった。弱虫だ、私は…。
泣いてる私に気づいた本好くんは抱きしめてくれた。私はその胸の中で思いっきり泣いた。今まで堪えていたもの全部吐き出すみたいに。