バスケ部が終わる時間を狙って私は体育館に行った。そうじゃないと、小金井先輩に逃げられるような気がしたから。
見つからないように隠れていたけど、あっさり見つかってしまった。
「なちゃん、何してるの?」
「っ!小金井先輩…」
「あ、オレ帰るから」
「え、あの、ちょっと待ってください!」
「なに?」
何だか少し怖い小金井先輩。でも、青峰君は言ってくれた。逃げちゃダメだって。私が今思ってることを伝えるんだ。
「私、この1ヶ月間ずっと小金井先輩から逃げていました。嫌いって言われて、その言葉ばかり頭の中で繰り返されて、先輩に会うのが怖かった」
「…うん」
「それでも私、先輩がどうしてるかずっと考えてて、分かったんです」
「……」
「嫌われててもいい。私はまだ、先輩のことが大好きなんです」
小金井先輩はポカンとした顔で私を見た。そしてすぐに顔を赤くした。暑いのか先輩は手をパタパタして冷ましていた。
何だかおかしくて私は「ふふっ」と笑ってしまった。それを見た先輩は「何笑ってるのさ!」と私の頭に指でつんっとした。
「でもなちゃんは水戸部が好きなんじゃないの?今の告白は過去形だよね」
「?」
「…悪いとは思ってるんだけど、なちゃんが水戸部に付き合ってください!って告白してるところ、見ちゃったんだよね。両思いだったんでしょ?」
全く心当たりがない。でも自分のフルパワーで頭を回転させて思い出してみる。
あ、思い当たる節が分かった…かも。
「それってもしかして、買い物に付き合ってもらった時のですか?」
「え」
「きっと先輩が見たのは、水戸部先輩に買い物に付き合ってもらえないかって言ったんですよ。先輩にあげるプレゼント選びに手伝ってもらうために」
次は小金井先輩が頭を頑張って回転させてる番で。
うーんとずっと考えて、ようやく繋がったのか「なんだー…」と言ってぺたんと座り込んでしまった。それを見て私もしゃがみこむ。
そして、カバンに入れてた可愛くラッピングされた袋を取り出した。
「先輩」
「ん?」
「これ、先輩に」
「開けてもいい?」
「はい」
先輩は丁寧にセロハンテープを剥がして開けた。
「リストバンド…?」
「はい!しかも6番選んだんで先輩専用です!」
「…ありがとう。部活の時につけるね!」
小金井先輩は私に向かって満面の笑みでお礼を言った。もちろん照れちゃうけど、何より先輩の笑顔が見れたから嬉しかった。
「私、諦めませんから!まだまだだけど、先輩が私を好きになるまで頑張りますから!」
「っ!」
その日、先輩と私で楽しく笑いあいながら久しぶりに帰った。