「ただいまー…あれ?」
いつも聞こえてくるモコちゃんの「おかえりなさい」が聞こえない。沖田さんが来るの知ってるから、遅くなることはないと思うんだけど…。
沖田さんに上がってもらって、リビングに向かった。机の上にはお皿の準備がしてあって、キッチンには料理がもう出来上がっていた。
モコちゃんどこだろう。
コンコン、とモコちゃんの部屋のドアをノックしてから入ると、モコちゃんはベッドで寝ていた。
「なんだ。モコ寝てるんじゃねーか」
「そう、みたいですね」
「にしてもぐっすりでさァ」
そう言って、沖田さんはモコちゃんの頬をつっついた。
「ぷにぷに」
「ちょ!モコちゃん起きたらどうするんですか!」
「いいじゃねェか。オレはこいつで遊びてェだけなんでさァ」
「…はぁ」
最近、沖田さんがモコちゃんに対する反応が違う気がする。その逆も言えるんだけど。
きっと、沖田さんはモコちゃんが好きなんだと思う。
こういうの感って、大抵ハズレないのがオレで。でも直接聞く勇気はない。ヘタレだな…オレ。
「おいザキ」
「はい?」
「はっきり言うけど、オレはモコのことが好きだ。お前に渡すつもりはない」
「…っ!」
なんだろう。
なんでオレってこんなにもダメなんだろう。こんなんだから、ヘタレなんだ。
怖くて、勇気がなくて、一歩がなかなか踏み出せない。
悔しい。
すごく、悔しい。
「オレ…は…」
「言いたいことあるんだったら、きちんと言えよ」
「…。オレは、モコちゃんが好きです。沖田さんには負けませんから」
「おう」
オレ、もっと頑張るから。
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