「いらっしゃい!」
「お邪魔するアル」
「お邪魔するわね」
悩んだ結果、神楽ちゃんとお妙ちゃんを家に呼ぶことにした。お妙ちゃんが来るのは2回目だけど、神楽ちゃんは来るのは初めてだ。
そのせいか、さっきから神楽ちゃんはずっとそわそわしている状態だった。
とりあえず落ち着かせようと、お菓子を出したら「食べていいアルか!?」と言った。それに答えるようにうなずいたら、かなりの速さでお菓子を食べ始めた。
足りるかなー…あ、足りなかったらつくればいいか。
「モコちゃん。手ぶらじゃなんだから卵焼き作ってきたわよ。食べる?」
「あ、あぁ…うん、ありがとう。後で食べるね」
お妙ちゃんが差し出した黒い物体をもらいながら、お礼を言った。…退くんに食べてもらおうかな。
「モコの家って何だか男の匂いがするアル」
「?」
「何だか嗅いだことある匂いネ」
くんかくんかと鼻を犬みたいにヒクヒクさせている神楽ちゃん。本当に犬みたいだ。
退くんには会ったことないから違うよね。そう考えると、思い当たる人はあの人しかいない。
「銀時さんの匂い…?」
「!」
「モコちゃん。この家にあの男が来るの?」
「うん。たまに…というかしょっちゅう夕飯食べに来るよ」
私が言ったあと、お妙ちゃんと神楽ちゃんに肩を捕まれて、前後ろに揺さぶられた。
「だめじゃないの!あんな変な男を家に上がらせるなんて!!」
「そうアル!あんな仕事してるか分からないヤツを家に入れるのは許さないネ!!」
「モコちゃん!もうこの家に男を上がらせちゃだめよ!」
二人が一通り私にお叱りをした後、タイミングがいいのか悪いのか、玄関のドアが開く音がした。
そして「お邪魔しまーす」とやる気のない挨拶が聞こえてきた。これはもしや、死亡フラグっていうものがたったんじゃないか。
「モコ飯ー…って、テメーらなんでいるんだよ」
「銀さん…?」
「銀ちゃん……」
お妙ちゃんと神楽ちゃんはゆっくりと銀時さんのほうに振り返った。
ごめんなさい、銀時さん。こればかりは助けられません。
私は見てられないなと思って部屋に戻った。背後から悲鳴が聞こえたけど…あ、間違えた、聞こえてなかった。
退くんが帰ってくるまでに片付くかな。
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