「今日は仕事の都合で家に帰ってこれないから、よろしくね」と、朝退くんは家を出る前に言った。久しぶりに一人で過ごすのか。何だか寂しい感じがする。
そんなことより仕事頑張らなきゃ、と思ってデスクに向かった。
「モコさん」
「新八くんどうしたの?」
「昨日は煮物ありがとうございました。とても美味しかったです」
「本当?よかったー…。新八くんの口に合わなかったら嫌だなぁって思ってたから安心したよ」
「またよかったら貰ってもいいですか?」
「うん!どうぞ」
「ありがとうございます!」
何だか犬みたいな新八くん。可愛い。
料理の腕も磨かなきゃって思った。
――――――
「ただいまー…って退くんいないんだ」
とりあえずお腹が空いたから、簡単に作れる料理を作った。ついいつもの癖で、少しだけ量を多く作ってしまって、余計に寂しくなってきた。
今日のご飯は全然食べた感じがしなかった。
そろそろお風呂に入ろうと立ち上がった時に、玄関でガチャガチャという音がしたかと思ったら、キーっとドアが開いた。
退くんは帰ってこないって言ってたし絶対に違う。銀時さんはインターホンを押すから違う。じゃあ誰?
怖くなってフライパンを片手にそろっと覗いて見ると入ってきた人と目が合ってしまった。
「あ……っ」
「誰でさァ」
「あなたこそ、誰ですか…?」
「山崎の友達、とでも言っておくでィ」
「お友達……」
今日来るとは退くんから聞いてなかったから、アポなしで来たっていうことだよね。
玄関で立ち話も何だからリビングに上がってもらうことにした。
「お前、名前は何でィ?」
「…春日モコです」
「モコ。腹減った、飯」
「へ?」
「飯」
「あ、はい」
返事をしてしまった。でも少し作りすぎてたから丁度いいか、と思ってお皿に盛り付けていった。そして料理とご飯を持っていった。
「冴えねェ料理だな」
「今日はあまり動きたくなかったから仕方ないんです!え、と…」
「沖田総悟」
「…沖田さん、どうして退くんの家に来たんですか?留守なのに」
「そりゃ、あんたの顔を一度見たかったからでさァ」
「私?」
どうして私の顔を見に来るためにここまで?不思議になって質問しようと思ったのに「ごちそうさまでさァ」と言って帰ってしまった。
明日、退くんに聞いてみよう。沖田さん、だっけ?は一体何者なのか。
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